うさこ観覧記

またブログ始めました。展覧会観て自分のために何か残さないとすぐ記憶が流れていくから。

文化財よ永遠に☆泉屋博古館分館編

泉屋博古館分館にて10/27迄開催中の「文化財よ、永遠に」展ブロガー内覧会に行ってきました。写真は美術館の許可を得て撮影。

度々見かける「文化財よ、永遠に」あれ?と思っていたら、全国4か所で同名の展覧会をほぼ同時期だけどまちまちな感じで開催中。

住友財団の文化財修復助成30周年の記念の展覧会で4つの美術館を会場にテーマを分けて展示。30年それだけ多くの修復を手掛けてきたということ。累計で千件だそうでこういった企業の社会貢献いいね!

4つの美術館は

泉屋博古館分館 9/10~10/27 東の方の絵画や工芸品

東京国立博物館 10/1~12/1 仏像

泉屋博古館 9/6~10/14 京都ゆかりの文化財

九州国立博物館 9/10~11/4 九州沖縄の文化財

 

というわけで今回は泉屋博古館分館での文化財よ、永遠に展。 

どれもこれも貴重な名品揃い。

絵画は数百年単位で修復を経てきており百年に一度というのがいちようのルール。次の百年後の修復にバトンタッチして今ある状態を残すよう使命を帯びて受け継いでいく。

この展覧会では作品の横に主な修復状況のパネルが併せて展示され修復状況を確認しながら鑑賞するのがひとつの見どころ。

第1室に展示されている中世の仏画と巻物は鎌倉時代から修復を経て受け継がれてきたものなので特に修復の醍醐味が!ただし貴重な作品ばかりなのでこの部屋は内覧会でも写真撮影不可。写真なく説明が難しいのだけれど、まずは展示室入って左側のパネルで絵画の構造についての解説を読んでから個々の修復パネルを見るのがよいと思います。

☆絵画の五層構造:本紙、肌裏紙、増裏紙、中裏紙、総裏紙

この部屋で一番面白く見たのは(すいません修復の過程が見どころと言いながら作品の面白さ)この絵巻!

永青文庫の《長谷雄草紙》

絶世の美女が主人公のもとにやってきて百日触ってはいけないといわれたのにそこはやはり、禁を破り触ってしまい美女が水になって消えてしまう。それというのも完璧な美女とは、遺体からいいところを選んだ死体の寄せ集め!!だったから(このくだりは後期展示)。その一番の見どころシーンはやはり巻いたり見たりが頻繁になり折れが激しかったそうで修復は折れを直すのと汚れのクリーニング。

 

 修復の話で驚きだったのは中国の絵画

◆滋賀・聖衆来迎寺の《立花図》伝 王淵 ※前期展示

肌裏紙(☆絵画の五層構造のうち本紙のすぐ下の紙)が黒かったので白に変えたらあら不思議。花瓶が透明に。ガラスの器だったことが判明。絵の印象も明るくなった。なんでも肌裏紙を黒くするのが江戸後期に流行ったそうで、修復の難を隠す効果が(下が黒かったら破れが見えないとか)。なんだか黒っぽいなあと思える絵を見たら、肌裏紙が黒なのかもしれないという豆知識を得た。

 

第2室の近世日本の絵画と工芸では池大雅が!←池大雅展に行ってからすっかりお気に入り

練馬区立美術館の《比叡山真景図》

五味康祐氏旧蔵。40年間行方知れずの後発見され、その間床の間にかけっぱなしで雨だれの後などあり修復に2年を要したそう。

池大雅壮年期の基準作になる作品。更にこの絵は大雅の唯一の自画像である東京藝術大学所蔵《三上孝軒・池大雅対話図》に出てくる三上孝軒と一緒に比叡山ハイキングに行き、三上孝軒がその時のことを詩に詠み、その詩を基に大雅が描いたもので、言ってみれば二人の大切な思い出の絵。この仲の良さ、唯一の自画像(といっても残ってるのがたまたまこれだけかもしれないけれど)を三上さんとのツーショットにするなんて。相当親しい(と池大雅展図録にはそこまでしか書いてなかったけど内覧会ではそれ以上の解説が!)。池大雅は愛妻家(妻玉瀾との逸話も多数)と思っていたからなあ。

とにかく大切な一作が蘇り後世に伝えられて良かった。

この部屋も目を引く名品ばかり。円山応挙の水色が美しい絵巻も。木島櫻谷展で話題になった《かりくら》も(上写真)。

今目にしている文化財は何度かの修復を経て昔の人が大切に残してくれたおかげでこうして鑑賞できてること、更に今も文化財が修復により蘇り後世に受け継がれることを実感できる展覧会だった。他館の会場にも足を運びたい。

 

住友財団修復助成30年記念「文化財よ、永遠に」展は泉屋博古館分館にて2019年10月27日まで。現在は後期展示。