うさこ観覧記

またブログ始めました。展覧会観て自分のために何か残さないとすぐ記憶が流れていくから。

フリーアの北斎

すみだ北斎美術館で開催中の「フリーア美術館の北斎展」ブロガー内覧会に行ってきました。※写真は特別に許可を得て撮影 

 

最初に。スミソニアン協会フリーア美術館の美術品は創始者チャールズ・ラング・フリーアの遺言により門外不出。なので本物はワシントンD.C.に行ってみるしかない。。。

とういうわけで今回の展示作品のうちフリーア美術館所蔵の北斎肉筆画13点については全て複製画。でもはっきり言ってあまりに高精細なので隣に本物も一緒に展示されていてもその違いがわからないぐらい。どれ本物?みたいな。

和紙や絹本(!!)に高精細印刷(Canonスゴイ)なので質感はそのものだし美術館という暗めの照明の中、ガラス越しに観たらもう絶対素人の私なぞにはわかるはずもなく。。。

という程のすばらしい出来なので、「え~複製画なの~今回はパス」←自分が真っ先に言いそうなセリフ(-_-;)言わずに観に行ってみて!

他のコレクターが版画に夢中になる中、フリーアは肉筆画を好み、充実した北斎の肉筆画コレクションが形成された。その中から見応えある肉筆画13点(前期後期で展示替え作品もあり)の複製画とそれに纏わる本物もぎっしりでお出迎え。フリーアの作品とその絵に関連するすみだ北斎美術館所蔵作品が並ぶことで、まるで北斎の頭の中の図象引き出しを見ているよう。

関連作品とは例えばこんな感じ(この一覧凄いよ!)

↓同じモチーフが描かれた作品一覧(ここに出てくる作品が会場に並ぶ)

摺物(注文で作られた非売品の版画で趣味人同士で配りあったりしたので贅を凝らした作品も)多くて眼福だった。

 

以下目を引いた作品をいくつか紹介。※作品名の後に(フリーア)と記載したものがフリーア美術館の複製画

まず圧巻だったのが《玉川六景図》(フリーア)。最初の展示室にあるので、のっけからうわー! これは来てよかった大満足!となる作品。

六曲一双の屏風仕立てで12枚の絵が並ぶのだけど、またこれが謎を含み。そう絵の並び順!フリーア美術館所蔵の実物は右隻に人物6枚、左隻に風景6枚の並びになっているところ、明治の雑誌の中で今回複製画のように風景と人物が対になるように表装された写真が掲載されているのが判明。実際、玉川六景とは和歌にある6つの玉川を指す六玉川(むたまがわ)が題材で。

左から

陸奥の国 野田の玉川(宮城)、武蔵の国 調布の玉川(東京神奈川)、近江の国 野路の玉川(滋賀)、紀伊の国 高野の玉川(和歌山)、山城の国 井手の玉川(京都)、摂津の国 三島の玉川

風景一枚と人物一枚の対で六ケ所描かれているので、複製画の並びが納得のいく並びかと。

意味を知ってしまうとこの並びがしっくりくるけど、フリーアの並びの右隻は全部人物(それも向き合う様に)、鳥と魚は真ん中、風景は風景みたいなのもなんかわかる気もする。岩佐又兵衛の金谷屏風の並びの謎(こういうのわくわくする)でもそれぞれ見た人が並びを考えてみて!とあったので、この屏風についてもみんなが好きな並びに変えてみたり、意味の通る複製画の並び、フリーアの並び、どっちが落ち着くか?または好みなのか考えてみるのもいいかも。

それにしても北斎の六曲一双の屏風、それも渾身の描写のこんな大作あったのねー。見ていてとても心浮き立つ作品。

特に鯉お気に入り(↓写真は屏風の中の一枚)。というか見たことある感。

と思ったら、鯉は北斎得意の題材で弟子たちも多く描いていたそう。

鯉関連のすみだ所蔵品も並ぶ。フリーア作品とすみだ作品のこの複合的展示が本当に面白い。

なんとすみだにも玉川の肉筆が!《千鳥の玉川》鳥や水の描写が素晴らしい。これは複製ではなく本物(^^;

 

あと目を引いたのが《雷神図》(フリーア)。

この暗雲ぐるぐるがいいのです。赤い稲妻も。そして結構よぼよぼ?(^^;

というわけでお馴染み「釈迦御一代絵記」より、力強くてぐるぐるのこれ↓

「画本武蔵鎧」↓の雷神は反転させたらフリーアの肉筆画とそっくり。

北斎漫画」からも。

それでこの雷神の対となる風神は何処へ?

ちなみにこの作品はフェノロサから購入したもので、それも離婚の際の慰謝料調達のためにフリーアに売ったのだそう。なんかそんな逸話どっかで読んだ気が(ブログの最後で紹介)。

 

美人画も良かったのだけど気になるのはゴージャスな《年始まわりの遊女図》(フリーア)は後期展示なので、すみだ所蔵の摺物を。

《己未美人合之内 常磐津本を見る美人》

《春興五十三駄之内 庄野》

最後は《波濤図》(フリーア)。

これは!こんな神奈川沖浪裏みたいな肉筆画があったのか!

と思ったらちゃんと並びで展示してます。行ったり来たり俯瞰して観たりと比較も可。

という至れり尽くせりの展覧会でした。

「綴プロジェクト」高精細複製画で綴るスミソニアン協会フリーア美術館の北斎展すみだ北斎美術館にて前期7月28日まで、後期は7月30日~8月25日まで(一部展示替えあり)で開催中。

門外不出のフリーア美術館の作品を、ここすみだで本物と違う並び順にするとか畳に直置きするとか、複製画ならではの展示を実現した綴プロジェクト、ほんとびっくりの技術力。綴プロジェクトで作られた複製画の数々、みんなたぶんどっかで見てるかも。

 

フェノロサとフリーアの逸話が載ってた本。

流出した日本美術の至宝 (筑摩選書)

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