うさこ観覧記

またブログ始めました。展覧会観て自分のために何か残さないとすぐ記憶が流れていくから。

本を通じた海外交流

静嘉堂文庫美術館で開催中の「書物による海外交流の歴史~本が開いた異国の扉~」展のブロガー内覧会に行ってきました(写真は特別に許可を得て撮影)。

 

カラフルな絵画や挿絵が並んだりしていないのでぱっと見地味目な展覧会?。。。いえいえ、知れば知るほど熱かった。「ほー!」という驚きと知る楽しみがたくさん詰まった展覧会だった。

美術館巡りが趣味で絵画中心に見て回る中、本の展覧会も積極的に見に行くことにしている。本が好きだし、美しい本、稀少本、挿絵の楽しみというのもあるけど、今回の展示で自分でもそうそうこの醍醐味!と思ったのは美術館博物館で見る本は歴史を纏っていて、その本のことを知ることで歴史や文化その時代の人々の様子まで知ることができるから。

 

展覧会は4章立て

Ⅰ.これぞ我らがお宝本 -古く日本にもたらされ、読まれ、親しまれた本

Ⅱ.驚きは本の中からやってくる -海外の文化や情報を紹介している本

Ⅲ.新たに花開くもの -海外の影響を受けて我が国で著された本

Ⅳ.橋をかける「ことば」-辞書と字典

 

たくさんの「ほー!」となった展示の中からいくつか紹介すると。

 

↓下写真は重文「南華真経注疏」金沢文庫に収められていたお宝本。徒然草にも好ましい本と書かれるぐらい(というわけで徒然草も展示)。

 

中国から船で運ばれた貴重な本をどうにか日本で作りたいと作られた覆刻版(原本をかぶせぼりしたコピー本)と元になった原本が並べられた展示。↓下写真の右側の覆刻版「春秋経伝集解」は割れた所まで忠実にコピーしていてその心意気と熱が伝わる。

五山版という鎌倉末~室町末の鎌倉五山京都五山禅宗のお坊さんがコピーした覆刻版書籍群。漢詩文、史書、辞書など実用書も作り、それまで専ら経典類など宗教中心だったものに、それ以外のジャンルを取り入れた画期的な出版文化。ほー!素晴らしい。

絵の楽しみでは司馬江漢あり。「天球全図」(上下写真)など驚きの本も。この時代の花開く蘭学の様子がダイレクトに伝わる。江戸時代は開港された場所が限定されていたので閉ざされたイメージだったけど(鎖国のイメージ)、江戸中期、新知識は娯楽であり(ビックリ!!)一般庶民が買える本として本屋さんで売られていた。知識が娯楽だったり、一般庶民が同時に最新知識や情報を入手できたという出版文化に驚く。←「ほー!」となるでしょ(^^;

漢語、オランダ語、ロシア語、英語、フランス語と辞書が並んでいるのを見て、まあ海外交流に辞書は必要だよなあとぼんやり見ていたところ、その辞書が作られた経緯が歴史そのもので、エピソード一つとっても「ほー!」となる。初の英和辞典「あんげりあごりんたいせい(漢字は↓写真で)」はフェートン号事件に危機感を持った幕府がこれからは英語も必要として作られた辞書。このフェートン号事件当時の商館長ヘンドリック・ドゥーフの編纂した辞書「長崎ハルマ」も展示あり。辞書は当時の日本を取り巻く情勢が色濃く反映されこんなに面白いとは思ってなかった。

 

日本は島国だけど、海外から隔絶された孤島ではなかった。3世紀半ばから既に中国や半島の国々と往来があり、書物を通じて多くの海外交流があり、たくさんの情報が書物を通じて日本に入ってきていた。江戸時代になると西洋との交流も盛んになり、本を通じて異国を知り、出版文化の広がりとともに文化や情報が不特定多数の多くの人に同時に伝わった(情報を一部の特権階級や知識人のものとせず本を出版するという形で公開したから。この点も優れてる)。

 

何度も言って恐縮ですが地味目な展示だけどとっても面白い。積極的な興味をもって見にいくことで(キャプションもしっかり読むことで)楽しみが倍増する展示。なので、それは面倒だわ。もうちょっと受け身で見たいわ。という人には超おすすめの列品解説というのがあるので、それに合わせて観に行くのがよいと思います。私も今回内覧会にて(同内容かどうかわからないけれど)解説を聞いたおかげで「ほー!」がいっぱいとても面白かったし、以前開催の展示でも何度か静嘉堂の列品解説を聞き大満足だったので自分メモとして「ギャラリートークが当たりの美術館」というグループに入れてるぐらい(^^;なので。

列品解説の日程はこちらのイベント情報にて。

最後に静嘉堂でくつろぐねこちゃん

司馬江漢の《双猫図》から一匹抜け出したみたいな(^^;

書物にみる海外交流の歴史~本が開いた異国の扉~」展は静嘉堂文庫美術館にて2019年8月4日まで。歴史好きのこどもたちが解説付きで見られるといいのにね。もし自分が小学生だったらわくわくしたと思う。