うさこ観覧記

またブログ始めました。展覧会観て自分のために何か残さないとすぐ記憶が流れていくから。

フリーアの北斎

すみだ北斎美術館で開催中の「フリーア美術館の北斎展」ブロガー内覧会に行ってきました。※写真は特別に許可を得て撮影 

 

最初に。スミソニアン協会フリーア美術館の美術品は創始者チャールズ・ラング・フリーアの遺言により門外不出。なので本物はワシントンD.C.に行ってみるしかない。。。

とういうわけで今回の展示作品のうちフリーア美術館所蔵の北斎肉筆画13点については全て複製画。でもはっきり言ってあまりに高精細なので隣に本物も一緒に展示されていてもその違いがわからないぐらい。どれ本物?みたいな。

和紙や絹本(!!)に高精細印刷(Canonスゴイ)なので質感はそのものだし美術館という暗めの照明の中、ガラス越しに観たらもう絶対素人の私なぞにはわかるはずもなく。。。

という程のすばらしい出来なので、「え~複製画なの~今回はパス」←自分が真っ先に言いそうなセリフ(-_-;)言わずに観に行ってみて!

他のコレクターが版画に夢中になる中、フリーアは肉筆画を好み、充実した北斎の肉筆画コレクションが形成された。その中から見応えある肉筆画13点(前期後期で展示替え作品もあり)の複製画とそれに纏わる本物もぎっしりでお出迎え。フリーアの作品とその絵に関連するすみだ北斎美術館所蔵作品が並ぶことで、まるで北斎の頭の中の図象引き出しを見ているよう。

関連作品とは例えばこんな感じ(この一覧凄いよ!)

↓同じモチーフが描かれた作品一覧(ここに出てくる作品が会場に並ぶ)

摺物(注文で作られた非売品の版画で趣味人同士で配りあったりしたので贅を凝らした作品も)多くて眼福だった。

 

以下目を引いた作品をいくつか紹介。※作品名の後に(フリーア)と記載したものがフリーア美術館の複製画

まず圧巻だったのが《玉川六景図》(フリーア)。最初の展示室にあるので、のっけからうわー! これは来てよかった大満足!となる作品。

六曲一双の屏風仕立てで12枚の絵が並ぶのだけど、またこれが謎を含み。そう絵の並び順!フリーア美術館所蔵の実物は右隻に人物6枚、左隻に風景6枚の並びになっているところ、明治の雑誌の中で今回複製画のように風景と人物が対になるように表装された写真が掲載されているのが判明。実際、玉川六景とは和歌にある6つの玉川を指す六玉川(むたまがわ)が題材で。

左から

陸奥の国 野田の玉川(宮城)、武蔵の国 調布の玉川(東京神奈川)、近江の国 野路の玉川(滋賀)、紀伊の国 高野の玉川(和歌山)、山城の国 井手の玉川(京都)、摂津の国 三島の玉川

風景一枚と人物一枚の対で六ケ所描かれているので、複製画の並びが納得のいく並びかと。

意味を知ってしまうとこの並びがしっくりくるけど、フリーアの並びの右隻は全部人物(それも向き合う様に)、鳥と魚は真ん中、風景は風景みたいなのもなんかわかる気もする。岩佐又兵衛の金谷屏風の並びの謎(こういうのわくわくする)でもそれぞれ見た人が並びを考えてみて!とあったので、この屏風についてもみんなが好きな並びに変えてみたり、意味の通る複製画の並び、フリーアの並び、どっちが落ち着くか?または好みなのか考えてみるのもいいかも。

それにしても北斎の六曲一双の屏風、それも渾身の描写のこんな大作あったのねー。見ていてとても心浮き立つ作品。

特に鯉お気に入り(↓写真は屏風の中の一枚)。というか見たことある感。

と思ったら、鯉は北斎得意の題材で弟子たちも多く描いていたそう。

鯉関連のすみだ所蔵品も並ぶ。フリーア作品とすみだ作品のこの複合的展示が本当に面白い。

なんとすみだにも玉川の肉筆が!《千鳥の玉川》鳥や水の描写が素晴らしい。これは複製ではなく本物(^^;

 

あと目を引いたのが《雷神図》(フリーア)。

この暗雲ぐるぐるがいいのです。赤い稲妻も。そして結構よぼよぼ?(^^;

というわけでお馴染み「釈迦御一代絵記」より、力強くてぐるぐるのこれ↓

「画本武蔵鎧」↓の雷神は反転させたらフリーアの肉筆画とそっくり。

北斎漫画」からも。

それでこの雷神の対となる風神は何処へ?

ちなみにこの作品はフェノロサから購入したもので、それも離婚の際の慰謝料調達のためにフリーアに売ったのだそう。なんかそんな逸話どっかで読んだ気が(ブログの最後で紹介)。

 

美人画も良かったのだけど気になるのはゴージャスな《年始まわりの遊女図》(フリーア)は後期展示なので、すみだ所蔵の摺物を。

《己未美人合之内 常磐津本を見る美人》

《春興五十三駄之内 庄野》

最後は《波濤図》(フリーア)。

これは!こんな神奈川沖浪裏みたいな肉筆画があったのか!

と思ったらちゃんと並びで展示してます。行ったり来たり俯瞰して観たりと比較も可。

という至れり尽くせりの展覧会でした。

「綴プロジェクト」高精細複製画で綴るスミソニアン協会フリーア美術館の北斎展すみだ北斎美術館にて前期7月28日まで、後期は7月30日~8月25日まで(一部展示替えあり)で開催中。

門外不出のフリーア美術館の作品を、ここすみだで本物と違う並び順にするとか畳に直置きするとか、複製画ならではの展示を実現した綴プロジェクト、ほんとびっくりの技術力。綴プロジェクトで作られた複製画の数々、みんなたぶんどっかで見てるかも。

 

フェノロサとフリーアの逸話が載ってた本。

流出した日本美術の至宝 (筑摩選書)

流出した日本美術の至宝 (筑摩選書)

 

 

 

 

 

本を通じた海外交流

静嘉堂文庫美術館で開催中の「書物による海外交流の歴史~本が開いた異国の扉~」展のブロガー内覧会に行ってきました(写真は特別に許可を得て撮影)。

 

カラフルな絵画や挿絵が並んだりしていないのでぱっと見地味目な展覧会?。。。いえいえ、知れば知るほど熱かった。「ほー!」という驚きと知る楽しみがたくさん詰まった展覧会だった。

美術館巡りが趣味で絵画中心に見て回る中、本の展覧会も積極的に見に行くことにしている。本が好きだし、美しい本、稀少本、挿絵の楽しみというのもあるけど、今回の展示で自分でもそうそうこの醍醐味!と思ったのは美術館博物館で見る本は歴史を纏っていて、その本のことを知ることで歴史や文化その時代の人々の様子まで知ることができるから。

 

展覧会は4章立て

Ⅰ.これぞ我らがお宝本 -古く日本にもたらされ、読まれ、親しまれた本

Ⅱ.驚きは本の中からやってくる -海外の文化や情報を紹介している本

Ⅲ.新たに花開くもの -海外の影響を受けて我が国で著された本

Ⅳ.橋をかける「ことば」-辞書と字典

 

たくさんの「ほー!」となった展示の中からいくつか紹介すると。

 

↓下写真は重文「南華真経注疏」金沢文庫に収められていたお宝本。徒然草にも好ましい本と書かれるぐらい(というわけで徒然草も展示)。

 

中国から船で運ばれた貴重な本をどうにか日本で作りたいと作られた覆刻版(原本をかぶせぼりしたコピー本)と元になった原本が並べられた展示。↓下写真の右側の覆刻版「春秋経伝集解」は割れた所まで忠実にコピーしていてその心意気と熱が伝わる。

五山版という鎌倉末~室町末の鎌倉五山京都五山禅宗のお坊さんがコピーした覆刻版書籍群。漢詩文、史書、辞書など実用書も作り、それまで専ら経典類など宗教中心だったものに、それ以外のジャンルを取り入れた画期的な出版文化。ほー!素晴らしい。

絵の楽しみでは司馬江漢あり。「天球全図」(上下写真)など驚きの本も。この時代の花開く蘭学の様子がダイレクトに伝わる。江戸時代は開港された場所が限定されていたので閉ざされたイメージだったけど(鎖国のイメージ)、江戸中期、新知識は娯楽であり(ビックリ!!)一般庶民が買える本として本屋さんで売られていた。知識が娯楽だったり、一般庶民が同時に最新知識や情報を入手できたという出版文化に驚く。←「ほー!」となるでしょ(^^;

漢語、オランダ語、ロシア語、英語、フランス語と辞書が並んでいるのを見て、まあ海外交流に辞書は必要だよなあとぼんやり見ていたところ、その辞書が作られた経緯が歴史そのもので、エピソード一つとっても「ほー!」となる。初の英和辞典「あんげりあごりんたいせい(漢字は↓写真で)」はフェートン号事件に危機感を持った幕府がこれからは英語も必要として作られた辞書。このフェートン号事件当時の商館長ヘンドリック・ドゥーフの編纂した辞書「長崎ハルマ」も展示あり。辞書は当時の日本を取り巻く情勢が色濃く反映されこんなに面白いとは思ってなかった。

 

日本は島国だけど、海外から隔絶された孤島ではなかった。3世紀半ばから既に中国や半島の国々と往来があり、書物を通じて多くの海外交流があり、たくさんの情報が書物を通じて日本に入ってきていた。江戸時代になると西洋との交流も盛んになり、本を通じて異国を知り、出版文化の広がりとともに文化や情報が不特定多数の多くの人に同時に伝わった(情報を一部の特権階級や知識人のものとせず本を出版するという形で公開したから。この点も優れてる)。

 

何度も言って恐縮ですが地味目な展示だけどとっても面白い。積極的な興味をもって見にいくことで(キャプションもしっかり読むことで)楽しみが倍増する展示。なので、それは面倒だわ。もうちょっと受け身で見たいわ。という人には超おすすめの列品解説というのがあるので、それに合わせて観に行くのがよいと思います。私も今回内覧会にて(同内容かどうかわからないけれど)解説を聞いたおかげで「ほー!」がいっぱいとても面白かったし、以前開催の展示でも何度か静嘉堂の列品解説を聞き大満足だったので自分メモとして「ギャラリートークが当たりの美術館」というグループに入れてるぐらい(^^;なので。

列品解説の日程はこちらのイベント情報にて。

最後に静嘉堂でくつろぐねこちゃん

司馬江漢の《双猫図》から一匹抜け出したみたいな(^^;

書物にみる海外交流の歴史~本が開いた異国の扉~」展は静嘉堂文庫美術館にて2019年8月4日まで。歴史好きのこどもたちが解説付きで見られるといいのにね。もし自分が小学生だったらわくわくしたと思う。

  

いい人っぽい癒しのドービニー

東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(いつも損ジャと呼んでいるけど(^^;名称変更予定というので残り少ない日数の正式名称を使ってみた)にて開催中のシャルル=フランソワ・ドービニー展のプレス内覧会に行ってきました。

※写真は特別に許可を得て撮影

さてドービニー。

最近まで知らなかった(^^;

シャルル=フランソワ・ドービニー(1817~1878)

19世紀フランスを代表する風景画家。バルビゾン派で紹介されるけれど、それほどバルビゾンに長く関わっていなかったのでコローやミレー程大きく取り上げられず日本では初の本格的な個展。

(一階の美術館入り口、エレベーターで上がる前のロビーでドービニーについてのすごくわかりやすくて、ドービニーを知らなくても親しみが持てる動画が上映されているのでそれを見てから行くとよいと思います。美術展のHPでも動画公開中。)

絵を見てもそう思うけれど、コローとお友達だったり、モネやピサロを画商に紹介してあげたりとドービニーいい人っぽい。絵から滲み出る人柄もよい感じ。

実際、こうして写真上げても、なんだか似たような構図の似たような川の絵で全く良さが伝わらない(^^;会場でも時間がなくてパーッと流してみてしまうと印象に残らないかも。でもね。ドービニーは一点一点じーっと見てるとはまる。ほんといい! 

実際似た様な構図の絵が多いのはそれだけ需要があって人気だったからと。うんうんうなずく。

特にお気に入りがルーアン美術館の《オワーズ川、朝の効果》←残念、写真撮影不可なので展覧会場にて是非!

朝焼けの空が川面に映り、川辺で牛が穏やかな顔でたたずみ、近くに牛飼い?そして小さく小さく川辺に青い鳥。もうずっと見ていたい絵。

他の絵も目を凝らすと小さな鳥や動物が細かく描かれていて、それを見つけては目が喜び心ほぐれる。癒しのドービニー。

この左手前の《兎のいる荒れ地》。題名みないですっと通り過ぎたら荒野の絵。題名見て、え?うさぎ?あ!いるよ!小さく荒れ地でたたずんでるよ~。もう泣き笑いみたいな気分に。

ドービニーいいよなあ。小さく描かれた生き物たちの絵から伝わる温かさ。

この版画集「船の旅」も好き。ドービニーはボタン号という名前のアトリエ船を仕立て川辺の絵を描いた。そのボタン号での旅の様子。一枚一枚見ているだけで楽しくなる。

右端の絵は二代目のアトリエ船《ボッタン号》

ドービニーの風景画は刻々と変化する自然を素早いタッチで筆跡を残して描いていたため当初、印象を描いた荒描きの未完成の絵と批判されたそう。なんか聞いたような話だなー。そう印象派の受けた批判と同じ。ドービニーは印象派のさきがけのような画家。戸外で自然の風景を描く、アトリエ船で川辺の風景を描く。実際モネはドービニーの影響でアトリエ船で水辺の絵を描いた。

そしてゴッホはドービニーを尊敬していてひろしま美術館の《ドービニーの庭》を描いた。

ドービニー日本での知名度低いかもだけれど、絵を目にしてこの逸話を聞いたらもっと人気でるはず。というか私自身はその過程を辿ってすっかりドービニーファンになった。

シャルル=フランソワ・ドービニー展損保ジャパン日本興亜美術館にて2019年6月30日まで。

ラファエル前派展というかラスキン展

三菱一号館美術館にて開催中の「ラファエル前派の軌跡展」ブロガー内覧会に行ってきました。

※写真は特別に許可を得て撮影

ラファエル前派展?また?と思っていたら、いきなりターナー来た!《カレの砂浜ー引潮時の餌採り》

何故冒頭がターナーかというと、この展覧会の長い題名「ラスキン生誕200年記念 ラファエル前派の軌跡展」が種明かし。実はラスキン展だった!

ラスキンの作品とラスキンを巡る人々の展覧会なのでターナーからいつものラファエル前派の作家たちとウィリアムモリスまで。内覧会での解説の中で、ラスキン展としてしまうと人が呼べないというお話もあって(^^;でもまあ事実。私自身もラスキンと言われても、えーっと誰だっけ、(解説読んで)あー作家じゃないけど名前挙がる人、美術批評家でラファエル前派の精神的支柱みたいな人、と思い出し。

今回の展示では、そのジョン・ラスキン(1819-1900)が美術批評家だけでなく社会思想家でもあり、さらに彼自身も絵を描いたことを知った。

ラスキンの素描

自然や建築を描く。

 

ターナー(1775-1851)との繋がりは、評価を確立していたターナーがだんだん実験的抽象的絵画を描くようになり批判が多くなったとき、もともとターナーのファンだった若いラスキン(44歳年下)がターナーは自然を描いていると著作で擁護、ターナー再評価に貢献した(自身の名声も得た)のだそう。

展覧会ではラスキン旧蔵のターナー作品《ナポリ湾》も展示。

 

ラファエル前派の絵は美しい女性がまず目に入ってきて、その周りの自然の美しさ、植物が写実的で(本物に忠実で)美しいのも特徴的。それはラスキンの「自然をよく観察して描きなさい」を守って描いているから。

ちなみにラファエル前派の展示室↑美しい花に彩られた女性たちの華やかなお部屋は今回撮影可エリアです!金の派手な額縁に全く負けない絵、というか金縁が似合う。

ラスキンを含むどろどろの人間関係については割愛。こんがらがっているので毎展覧会で確認してあーそうだったと思い出すけど毎回(^^;←こんな顔になるし覚えきれないし)

 

以前はミレイの絵が一番の関心だった。でも最近はエドワード・バーン=ジョーンズ(1833-1898)の絵が楽しみ。

この左の絵↑の《赦しの樹》の癖の強さというか苦い味わい。

 

ラスキンはバーン=ジョーンズを見出し、この画家ならばと見込んで指導した。

そのバーン=ジョーンズとオックスフォード大学在学中に知り合った友人で、その後一緒に作品制作もするのがウィリアム・モリス(1834-1896)。

モリスとラスキンの繋がりは社会思想的なこと。ラスキン産業革命により機械化が進み粗雑な製品が溢れたこと、機械のために人間が働かせられていることを批判、手仕事の美しさ、労働の喜びを提唱した。モリス主導のアーツアンドクラフツ運動(伝統的な手仕事を尊重し生活と芸術を一致させることを目指した)はそのラスキンの考えを信奉する人々により始まったもので、モリスはラスキンの考えを継承したことに。

 

最後展覧会の締めくくりとしてとても良いなと思った大きなタペストリー。

モリスとバーン=ジョーンズの《ポーモーナ(果物の女神)》

モリスのデザインした植物の中にバーン=ジョーンズの女神が。

 

ラスキン生誕200年記念 ラファエル前派の軌跡展」は三菱一号館美術館にて2019年6月9日まで。

 

大好きモリスの《いちご泥棒》

ウィリアム・ド・モーガンのタイルもいい!

 

 

 

 

 

 

桜と一緒に華ひらく皇室文化

泉屋博古館分館にて開催中の「華ひらく皇室文化」展ブロガー内覧会に行ってきました。

 美術館周りはもうすぐ満開の桜で華やいでおりました(2019年3月27日撮影)。 

美術館前の太閤千代しだれ(醍醐の桜のクローン)は盛り過ぎ💦←来年のためにメモ(ソメイヨシノより早めなのね)

2018年は明治150年ということで今まであまり馴染みのなかった画家や工芸家を知る機会が多く(例えば野口小蘋など)帝室技芸員についての知識も増えたところで最期を飾る「華ひらく皇室文化」展。明治150年関連の展覧会の総決算みたいなものかと。

帝室技芸員とは、帝室(皇室)による美術工芸作家の保護と制作の奨励を目的として設けられた顕彰制度で、1890年~1944年までの55年間に陶磁、七宝、漆工、染織、金工、刀剣、絵画、彫刻、建築、写真、篆刻、図案といった分野で計79名が任命された。

 皇室のための作品制作だけでなく、技術の保護と発展のためという目的があった。

 

今回の展覧会はこの帝室技芸員の作品「明治宮廷を彩る技と美」と、宮中晩さん会で使われる洋食器やドレスやボンボニエールなどの華やかな宮廷文化を紹介する「鹿鳴館の時代と明治宮殿」の2部構成となっている。

↓写真は撮影可の現代のボンボニエール(ミキモト製作)

 

ずらっと並んだボンボニエール(撮影不可だったので会場で楽しみにしてください。素敵でかわいい)が見どころ。

以下個人的に見どころ!と思ったものをいくつか(展示順)。

☆乾山伝七の洋食器

それまで和食器に平らなお皿というのがなかったため、形に歪みがあるけれど絵付けはとても繊細で美しい、日本製の最初期の洋食器。

☆矢澤弦月《昭憲皇太后像》

☆松岡映丘《明治天皇像》

対になっているのに背景の金地の色が違うと思ったら、皇太后は青い金、天皇は赤い金が使われていてそれぞれ月と太陽を表すという解説。

☆天鵞絨(びろーど)友禅嵐図壁掛 12代西村左衛門

昨年こちらの美術館で開催された木島櫻谷展にて展示されていた櫻谷の若い時の作品《猛鷲図》が原画。まさか一年経ってから観られるとは。絵の感じと迫力だけは覚えているけど(うろ覚え)びろーど友禅という素材のせいか羽のしっとりした感じがとても美しく。

板谷破山《鮭》

重文の《葆光彩磁珍果文花瓶》ではなく←いやこれ本当に美しいのだけれど何回か見たことあるのでこっちじゃなくて《鮭》。というのも、板谷波山東京美術学校木彫科を卒業というのは知っていても木彫作品見たことなかったのでレア度で。

☆濤川惣助の《月花図七宝皿》《月桜図七宝額》《墨画月夜深林図七宝額》

どれもうっとりと見惚れてしまう。特に最後の月夜は300種の釉薬で黒の濃淡を表現とあってもう言葉なし。これは。。。としかいいようなく。水墨画のようでまた別の次元にいってしまっているようで。

野口小蘋もあった。前期《春山明麗図》と後期《蘭亭図》と入れ替えなので後期も行かなくては!

明治150年記念 華ひらく皇室文化 明治宮廷を彩る技と美」展は泉屋博古館分館にて前期は4月14日まで、後期は4月17日から5月10日まで。

同時期に学習院大学史料館でも「華ひらく皇室文化」展開催中(こちらは5月18日まで)なので併せて観に行かないと(ちなみにこちらは入場無料!)。

 

泉屋博古館分館近くのアークヒルズの桜。ほんと桜散策にいい季節。

 

 

 

 

 

かわいい青銅器

泉屋博古館分館で開催中の「神々のやどる器 中国青銅器の文様」展ブロガー内覧会に行ってきました。※写真は特別に許可を得て撮影

 

中国青銅器の世界というと器の種類がいろいろあってさらに器そのものの漢字が難しくて(^^;敷居が高く長らくスルーだった。それが数年前に東博東洋館のイベントで青銅器の見方というのに参加してから興味持つようになり。その時は文様から顔を探そう(顔面文様を見つける)という解説を聞きながらで苦手意識も飛んで楽しかった(文様から入るのいい)。

そして今回の展示は解説聞きながらじゃなくても一目で楽しい。

ぱっと見ではわからない隠れた文様が一目でわかる写真が一緒に展示されてるから。これいいね!

 

まず文様を探してから答え合わせするのもいい。こども楽しいよ絶対。

 

そして文様探しの白眉はメインビジュアルにもなってるこれ。

人が食われる直前か?!とよく見たらほほえましい顔してる。人がしがみついててまるでトトロ。なので《虎卣こゆう》のことをトトロと呼ぶ。

名前から判明。これは虎なんだそう。巨大猫っぽくもあるけど、虎型神様(トトロ)に守られる人間。

このトトロは頭の上に鹿も載せてて合体したブレーメンの音楽隊のようでもある。かわいい。全身に龍や蛇やバクやららあるし、後ろ姿には顔面(饕餮とうてつ)まで。

会場には「商周青銅器の文様」という初心者にもわかりやすい青銅器の文様についての解説があって、それによると

1.饕餮文(とうてつもん) 器の表面に大きく顔面文様。探すと目、鼻、口、耳、角などわかる。冒頭述べた東博のイベントで探したのがこれ

2.龍形文様 文字通り龍の文様(皇帝といえば龍だけど原点は青銅器だったんだ)

3.鳥形文様 小鳥から鳳凰の原型となった大鳥まで(鳳凰も青銅器からなんだ)

4.その他の動物文様

文様だけでなく、トトロが虎だったように器そのものが動物の形をしている青銅器がとにかくかわいい。 

一番かわいいのはこのミミズク↓《戈卣かゆう》

愛らしい。根津美術館の看板娘的な《双羊尊》←羊の顔が2つついてる青銅器、と同じように背中合わせにミミズクの顔が2個

またその表情がとぼけてていいし、たたずまいもかわいい。どうもそのかわいらしさは足が内股のせいらしい。

そのかわいい子が2個も。ミミズク4羽ってことか。泉屋博古館すごい。

たたずまいといえば、これ↓かっこいい。

 

ここで年表見ながら面白いなあと思ったお話をおさらい。

中国の青銅器は3500年以上前に誕生。商周の時代の青銅器はお祭や儀式のためのもので文様も神様である動物がモチーフ。それが漢時代のごろから青銅の鏡がたくさん作られるようになると吉祥文様に変わる。秦時代に官僚制がしかれ、それまで政治と祭りが密接な支配者のための青銅器が官僚クラスの個人のものになり、文様も個人の幸せ追及のためのモチーフになった。不老長寿だったり昇進だったり。

展覧会場第2室は、青銅器の鏡を展示(鏡は個人のラッキーアイテムだったんだね)。

↑大丈夫。鏡の文様を探せ!も詳細な解説パネル付き。イノシシかわいい。

 

形も文様も奥深いから敷居が高く解説がないとなかなかなあと思ってた青銅器の世界、ただただ文様の細かさ美しさを愛でるだけでもいいし、なんだ鏡は出世を願うラッキーアイテムだったりしたのか、と思ったり、単純に形がかわいい!動物文様探すの面白い!といったいろいろな楽しみ方を教えてくれる展覧会だった。

こどもが行くと楽しいと思う。歴史の勉強にもなるし(中国の歴史覚えるの面倒でしょ。青銅器に興味持ちながら楽しみながら覚えるといいと思う(^^;)。

神々のやどる器 中国青銅器の文様」展は泉屋博古館分館にて12/24まで。美術館前の泉橋のクリスマスイルミネーションやってるのでちょうど見頃。

あ、それと美術館入り口、なんでこんな所に顔出しパネル?と思ったら、展示を見てわかった(^^;あなたも虎型神様にいだかれ守ってもらおう!

 

ボナール観たらフィリップスへ行こう

三菱一号館美術館にて開催中の「全員巨匠!フィリップス・コレクション展」ブロガー内覧会に行ってきました。

写真は特別に許可を得て撮影(更に、通常は会場風景として作品撮影を許されるところ、今回は特別に作品そのものの撮影も可でした!)

マネ《スペイン舞踏》

出品されているのが全員巨匠作品それも選りすぐりのものばかりなので、見どころはざっくりいうと全部!!

そうなるともう個人的思い入れの見どころしか存在せず。

なので、私自身の見どころはボナール!

国立新美術館で開催中(12月17日まで)のピエール・ボナール展は初日の講演会から聴きに行き普段は行かないシンポジウムや対談といったイベントまで全出席。また今週もう一度観に行く予定、という入れ込み様。ボナール大好き。

その初日の講演会、オルセー美術館のイザベル・カーンさんのお話の中でもボナールには多くの買い手がいて(恵まれた制作環境)イワン・モロゾフとともにダンカン・フィリップスの名前が挙がっていた。そしてボナールのコレクションといえば第1がオルセー美術館であり、第2がフィリップス・コレクションとのこと。←この話は今回のブロガー内覧会でも紹介された。

これはボナール展観たら三菱一号館美術館のフィリップス・コレクション展観に行かないと!

 

名立たる巨匠作品75点中ボナールは4点。それもいいボナール(;'∀')ばかり。というか、コレクション全貌を見たわけではないけれど、フィリップス・コレクション半端ない。少なくとも今回東京に来ている作品、ボナールに限らずどれも素通りできない作品ばかりずらりと揃っている。

 

ボナール《犬を抱く女》

マルトと犬と食卓と。一目見て好き過ぎるでしょ、と思ったら。。。

フィリップスが1925年にこの絵を目にしてボナールの支援が始まったと解説あり(そうなるよねー)。その後1930年アメリカの美術館で初めてのボナールの個展も開催。

ちなみに今回の展覧会の展示の順序は年代順でも作家毎でもカテゴリー毎でもなくフィリップスが入手した順番とのこと。大きな黒丸の数字が今回の75点の入手順。おかげで8番目のボナールと9番目のモリゾの《二人の少女》が並ぶという素敵な展開に。

 

ボナールの代表作《棕櫚の木》

代表作だけあって前述のボナール展図録にも白黒で記載在り。色や背景の小さい人についての解説もあるのだけどなんぜ白黒の図版でわからないなあと思っていたら、まさか東京で直後に実物を確認できるとは!これは見逃せない。

 

ボナールの窓の外と部屋の中の絵も好きなので、これも嬉しかった。

《開かれた窓》

ボナールの絵はずーっと見てると様々な発見があり、あ!右下に猫!それもマルトとハイタッチしてる!かわいすぎる。あれ?いつも無表情のマルト笑ってる?マルトじゃないのかな。

などと次々と発見やら思いやらが交錯して全く見飽きないボナールの絵。ずっと見てられる絵。

 

ボナールの友人、ナビ派のヴュイヤールの絵も(いつかヴュイヤール展も開催希望)。

ヴュイヤール《新聞》

 

まだまだある好きな絵をいくつか。

みんな大好きルソー《ノートル・ダム》

シスレー《ルーブシエンヌの雪》

デュフィ《画家のアトリエ》

モランディも来てます《静物

ブラック《驟雨》

ジョルジュ・ブラックの絵は7点もあってどれもよくて自転車の絵だからとりあえずこれを挙げた。今回自分の中でブラック急上昇。

うまく写真が撮れなかった絵で挙げられない好きな絵や撮影不可のココシュカも挙げてない。とにかく好きな絵だらけの展覧会だった。

 

全員巨匠!フィリップス・コレクション展」は三菱一号館美術館にて2019年2月11日まで。