うさこ観覧記

またブログ始めました。展覧会観て自分のために何か残さないとすぐ記憶が流れていくから。

愛のすべて。

「愛のすべて。」と潤んだ瞳で問いかけてくるポスターが印象的。

 ルオー没後50年、パナソニック汐留ミュージアム開館15周年という特別なルオー展「ジョルジュ・ルオー 聖なる芸術とモデルニテ」開催中につきプレス内覧会に行ってきた(プレスではなくブロガーとして参加)。※写真は特別に許可を得て撮影

ジョルジュ・ルオー財団理事長(ルオーのお孫さん)ジャン=イヴ・ルオー氏

毎年ここで開催されるルオー関連の展覧会。ここのところ欠かさず観に行っている中今回は本当に特別と思う。特別な作品が展示されているというのもあるし(写真のルオー氏の背景の絵《サラ》は普段氏のオフィスにかけられ、生前ルオーがアトリエに何十年もかけていて絵の具を重ね彫刻のように厚くなっている)、キリスト教とルオーというど真ん中展示ということもある。元々ルオーの絵はキリスト教に根付いているけれどそれを直球で持ってくると急にとっつきにくい感が。宗教画題、受難とか受肉とか言われても…。

しかし。

「愛のすべて。」というあのポスターの台詞通り、宗教を超え全ての人の心に訴えかける愛についての作品群なので、文化や民族や宗教を問わず感動できる絵の数々が並んでいた。

とはいえ、プレス内覧会で後藤新治先生の解説を聞き、副題の意味や章立ての意味を理解してみると又深く味わえる展示と思ったので、簡単に以下に説明を(そんなのいいわ、感性で観るわ、という場合は下の見どころ3点だけで後はすっ飛ばして読んでください(^^;)。

◇見どころ

  1. ヴァチカンから来てる絵!(別の展覧会でヴァチカンが貸し出すなんて!という話を聞いてえらいことなんだな(^^;と)
  2. ガラスがかかってない絵がある!あの絵の具が盛り上がった様子や色の透明感がガラス越しじゃなく見られるまたとない機会
  3. 旅するのに耐えられない絵が来てる!厚くて脆いので今度いつ日本に来れるかわからない

以上大まかに3点。ルオーの絵は解説なくても心に迫ってくる。

 

◇副題「聖なる芸術とモデルニテ」について

モデルニテとは現代性、近代性。一方聖なる芸術、中世以来のキリスト教芸術は古典。芸術とは古典的で永続的な美の規範に対する反逆である(古典と現代性は半々であるべき)byボードレール

ならば20世紀を生きた画家であるルオーの古典に対する反逆、モデルニテとは?革新性は?というのが展覧会のテーマ、なのかな(急に弱気(^^;)。

 

◇4つの章立てと読み解くための4つのキーワード

第1章 ミセレーレ:蘇ったイコン

第1のキーワードはイコン 版画の複製性

元来イコン(礼拝用画像)は家庭でオリジナルをコピーして用いていた。現代の版画の複製性に通じる。

ルオーの慈悲と戦争がテーマの版画集《ミセレーレ》は、まるで20世紀に復活したイコンのような作品(蘇ったイコン)。各タイトルも全てルオーが考えた。

《ミセレーレ12》のタイトル「生きるとはつらい業…」

《ミセレーレ13》のタイトル「でも愛することができたなら、なんと楽しいことだろう」

続けて読むと、版画全体の主題が現れている。「生きる苦悩」と「愛による救済」

 

第2章 聖顔と聖なる人物:物言わぬサバルタン

第2のキーワードはサバルタン 被抑圧者の無言の抵抗

 サバルタンとは発言の場を持たない民族、虐げられ抑圧された人(被抑圧者)のこと。

第2章で集められた《聖顔》は栄光のキリストの顔ではなく物言うすべのないサバルタンの苦しみを代弁する顔。

 

第3章 パッション:受肉するマチエール

第3のキーワードはマチエール

 ルオーの独特なマチエール(絵の具厚塗りして彫刻のようになった絵肌)は、絵の具を塗り、塗った絵の具を削って薄くしてまた塗る、削っては塗るを繰り返し厚くなる。

まるで受肉。(受肉とは神が肉体を持つこと、だそう)

 

第4章 聖書の風景:未完のユートピア

第4のキーワードはユートピア 管理社会への警告

ヨーロッパで描かれてきたユートピアとは大海の孤島であったり山のてっぺんの秘境であったり現実世界と隔絶された姿で描かれてきた。一方ルオーのユートピアとは。

《秋 または ナザレット》ヴァチカン美術館蔵 1948年

太陽が輝き、地平線に建物、中央の末広がりの開かれた道には自由に人々が集う。

隔絶していない、誰にでも常に開かれた世界。

民族差別、難民排斥など内に閉じようとしている現代社会への警鐘にも見える。

 

以上、慣れない単語が多い中、ルオーの誰の心にも響く絵に助けられ、ほんの少し理解することができたことをまとめてみた。

 

ジョルジュ・ルオー 聖なる芸術とモデルニテ」はパナソニック汐留ミュージアムにて2018年12月9日まで。

 

帰り道の夕景

 

 

 

 

 

 

スウェーデンの理想の暮らしカールラーション展

カール・ラーション スウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催中)のブロガー内覧会に行ってきました。

※写真は特別に許可を得て撮影

日本では1994年にカール・ラーション展があり今回が2度目。1985年には日本でも著作「わたしの家」が出版されており 

カール・ラーション―わたしの家線描の水彩画で子供や家の様子が描かれた絵は一度目にするとあら素敵と目が留まる、ので名前は知らなくても絵柄は知られているのでは。

私自身カール・ラーションが気になったのはIKEA経由。以前IKEAカール・ラーショングリーティングカードセットがあって購入、素敵だなあと思い昔訪れたスウェーデン国立美術館の図録をみてみたら魅力的に描かれた妻カーリンと子供を描いた作品が紹介されていた。そこにはスウェーデンで一番愛されている画家という解説が(美術館訪れた時は巨匠名画ばかりに気を取られ地元作家は飛ばし気味。本当はそういうのこそ見るべきと今は思うけれど。美術館の壁画もカール・ラーションが描く)。

カール・ラーション 1853-1919

日本で言うと幕末に生まれ明治から大正時代に活躍した画家。面白いのはスウェーデンも遅れて近代化の道を歩んでいた時代ということ。日本と同じだ。ただ、カール自身は革新的な人で反アカデミーで反体制派だった。そのことで1880年代パリに移り住むことに。このころパリはジャポニスム全盛期でカールもその洗礼を受けた。

メインビジュアルの《アザレアの花》(上写真右)は花を全面に大きく持ってくる大胆な構図と線描で描くという点で浮世絵の影響が顕著な作品。ただ線描に関しては元々挿絵画家ということもあったからとも(挿絵作品も展示あり)。

しかしなんといってもカール・ラーションと言えば

1.近代化していくストックホルムに大作壁画を描いた(スウェーデン国立美術館フレスコ画

2.家族との理想の家を描いた水彩画画集を出版し世界中で人気になった

本展覧会では2つ目の仕事について、同じく芸術家である妻カーリンの仕事も展示(日本初紹介)して「理想の家」がより立体的にわかるようになっていた。

 ◇理想の暮らし、理想の家《リッラ・ヒュットネース》

カールとカーリン夫妻は田舎の家《リッラ・ヒュットネース》を改装し、アンティーク家具に手を入れたりカーリンのデザインした刺繍などのインテリアで理想の家を作り上げ、そこに暮らす家族、普段の子供の姿、隣人の様子を画集にして出版した。当時大人と子供は同じ食卓を囲んだりしなかったし、絵に描かれた子供の姿は緊張した面持ちで普段の姿ではなかった。そういう時代にカール・ラーションが描いた子供や家族の様子、家の中の様子はインテリアを含めてスウェーデンの理想の暮らしであり、世界中で出版され人気となった。

アーツ&クラフツ運動ぽいと思った

カーリンの刺繍作品の中でこの花と蛙が一番好き

 

展示の最後にIKEAの家具で設えた今に生きるラーション・スタイルのコーナーがあり、これを見るとカールとカーリンが作り上げた理想の暮らしは今の私たちの生活にも影響を与えているのだなあというのがよくわかる。

昔カールがジャポニスムの影響を受け、今の私たちが北欧デザインを好み暮らしに取り入れる。全く繋がりがないように思ってたカール・ラーションが今の私たちの生活に深く入り込んでいるという不思議な繋がり。

 カール・ラーション展東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館にて2018年12月24日まで開催中。

カール・ラーション スウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家

カール・ラーション スウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家

 

 最後にちょこっと感想:幕末から明治大正の日本の画家で反体制派の人ってどんな画家がいるのだろう。明治大正の日本の画家で思い浮かんだ横山大観などはばりばりの体制派。それとカール・ラーションは反体制派なのに国立美術館フレスコ画を描くまで上り詰めたということが凄い(本人が転向したのならまた話は変わってくるけれど)。国を愛するというのは国土やそこに暮らす人々の生活を愛することであり、体制を支持するしないは別なので当然と言えば当然だが、日本の場合、国=体制となりがちで、反体制派の人が国立施設の壁画を任されたりしないだろうなあと思ったので気になった。

 

カール・ラーション スウェーデンの暮らしと愛の情景 (ToBi selection)

カール・ラーション スウェーデンの暮らしと愛の情景 (ToBi selection)

 

 

 

芳崖の弟子たち

知らなかった画家の面白い絵が出ている展覧会は楽しい♪

泉屋博古館分館で開催中の「狩野芳崖と四天王」展ブロガー内覧会に行ってきた。※写真は特別に許可を得て撮影

メインビジュアルは狩野芳崖が全面に出ているので芳崖が主な展覧会かと思いきや(実際芳崖が中心だけれど)メインはその弟子たちの紹介と再評価の展覧会のよう。副題が「近代日本画、もう一つの水脈」なので。

↓展覧会に登場する人物相関図。この色分けを把握してから観るとわかりやすい

展覧会の構成は、↑人物相関図の3色(黄色オレンジ黄緑色)が3章に

第1章 狩野芳崖狩野派の画家たち(黄色)

木挽町狩野の四天王と呼ばれた狩野芳崖、橋本雅邦、木村立獄の3人と狩野友信

第2章 芳崖四天王(オレンジ)

芳崖の弟子たち岡倉秋水、岡不崩、高屋肖哲、本多天城

第3章 芳崖四天王の同窓生たち(黄緑色)

橋本雅邦の弟子、朦朧体の四天王の下村観山、横山大観菱田春草、西郷孤月と木村武山

第1章と第3章に登場する画家はお馴染みなので第2章の芳崖の弟子たち(芳崖四天王)が今回の見どころか。同窓の大観たちに比べ埋もれてしまった画家たち。

 

明治の近代日本画というと狩野芳崖がいて橋本雅邦がいて、大観、観山、春草あたりは有名なので知っているけど芳崖四天王と言われるとちょっと(^^;。たぶん私のような一般の人はそんな感じなんじゃないかと。

だから断然第2章の芳崖四天王が面白い。

もちろん第1章の江戸時代の狩野派の画風に近代が入ってくる様子がわかる展示も面白いし、第3章のお馴染み大観春草の型破りな朦朧体の絵とその先も面白い。まあ全部面白い(^^;けれどここでは自分が一番面白かった第2章の芳崖四天王の展示を紹介。

 

◇岡倉秋水(1867-1950)

岡倉天心の甥。東京美術学校第一期生として入学後翌年退学。図画教育に従事。芳崖の顕彰に励み、作品の鑑定も。

不動明王》と《慈母観音図》

不動明王》は後期展示の芳崖《仁王捉鬼図》に似てるそうなので後期に確認。ぐるぐるの火炎に左隅が水色なのが気になる。

《慈母観音図》は後期展示の芳崖《悲母観音》を写したもので数点存在するため注文がそれだけあった証。西洋顔料を使っていてとても発色が鮮やか。これも後期、師の芳崖作品との見比べが楽しみ。ちなみに、後に紹介の高屋肖哲の《悲母観音図 模写》もあるのでこれも併せて。

 

◇岡不崩(1869-1940)

狩野友信に入門のち芳崖師事。東京美術学校入学後2年で退学。図画教育に従事。本草学を研究した学者画家。

《秋芳》と《群蝶図》

写真はうまく撮れてないけれど美しくてとても好きな絵。本草学を極めた学者だけあって植物画としても正確なのだそう。古典的でありリアリティもあり←大正時代の主流派と一緒。

 

◇高屋肖哲(1865-1945)

 芳崖に師事、東京美術学校一回生として卒業後、仏画師の道へ。

芳崖四天王の中で一番好きかも。菱田春草も好きだけど。

本展覧会の見どころか。真ん中の絵《千児観音図 下絵》

これは是非実物を。芸術新潮2018年5月号「永久保存版 これだけは見ておきたい 最強の日本絵画100」の中で泉屋博古館分館長が押してた記事読んでたので、実物!とびっくり(記事もう一度読んでみたら本展覧会で出ますと予告されてた(^^;)

本画は行方不明なんだそう。観てみたいなあ。

前期展示の《武帝達磨謁見図》の中に一人こちらを向いてるおじさんがいるのだけど、それが高屋肖哲本人では?というお話も。

今回パネル写真で紹介されていた高野山三宝院襖絵《高野物狂》全26面(そんなにあるの!)というのも是非観てみたい。

 

◇本田天城(1867-1946)

西洋画を学んだ後芳崖に入門。東京美術学校に入学し卒業後は同校で助教授を務めた。

左の山水が本多天城の絵、だけどちょっと遠くの写真なので是非間近で。

なんか不思議な山水で、西洋と東洋のミックスというか遠景が西洋風の山水風景画?

やっぱり第3章の人たちともリンクしてる。

 

以上が芳崖四天王。

高屋肖哲は仏画だけど皆教育の方に行ってしまったのも埋もれた一因とも。

 

今回初めて知った芳崖四天王は観山、大観、春草たち朦朧体四天王と同窓生。絵も見応えあって面白いし、何より興味深いのは変遷を経て結局は芳崖四天王も朦朧体四天王も到達地点が同じような場所だったということ。朦朧体四天王が日本画から線を無くし光を描こうともがいて型破りな朦朧体の時期を経て再び線を取り戻したときの絵と、芳崖の弟子たちが芳崖の教えを継ぎ型を守りながらそれぞれが到達した絵が同じような感じという…。

なお、型破りな人たちが型の方へ収束していったのは、戦争の時代もあり東洋を重視する時代背景もあったという解説も。

今まで芳崖、雅邦⇒観山、大観、春草という流れが主流と思われてきたのが、もう一つの水脈(芳崖四天王)というのがあって、この二つの流れがまた同じところに向かっていく。そういった近代日本画の流れが展示を通して俯瞰できる壮大な展覧会だった。

菱田春草《春色》《海辺朝陽》ともに前期展示

前期後期で作品の入れ替えがあり、芳崖の重文2点《非母観音》と《不動明王》は後期に登場するので、是非芳崖四天王の作品と見比べたいから後期も見逃せない。展示替えが多いので前期後期両方いくのがよいかも(^^;

 

狩野芳崖と四天王 近代日本画、もうひとつの水脈」展は、泉屋博古館分館にて前期が10月8日迄、後期が10月10日~10月28日迄。

 

芸術新潮 2018年 05 月号

芸術新潮 2018年 05 月号

 

 

 

 

ティアラ権力者のコード

三菱一号館美術館で開催中の「ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界-1780年パリに始まるエスプリ」展のブロガー内覧会に行ってきました。写真は特別に許可を得て撮影しました(通常でも一部撮影可能なコーナーもあります)。

 

まず第一室に入って驚き。絵画と宝石が並ぶ、この展示空間の豪華さと作品展示の手の込みよう。

壁紙まで凝ってる。

次の部屋は麦の穂のティアラから麦の壁紙だったし。

なんでもパリファッションショーのデザインチームが乗り込み作りこんだそうで、美術館で学術的裏打ちのある芸術鑑賞とエンターテーメントのような楽しさのある展示空間。ティアラの部屋で圧倒されるし、あくまでジュエリーを展示しているはずが最後のお部屋なんて凄いことになってたよ桜吹雪(;'∀')

結論:

これは普段美術館よくいく人も満足できるし、観光でちょこっと寄った人も楽しめる美術展。

あ、結論言ってブログ終わってしま。。。う訳にいかないので(せっかくブロガー内覧会行ったので)、もうちょこっと紹介。

最初の部屋(冒頭写真)の「歴史の中のショーメ」。ちょうど国立新美術館ルーブル美術館展」の講演会でナポレオンの肖像画の解説中、この三菱一号館美術館のショーメ展も併せて観ることを勧められた。というのもナポレオンの戴冠式の宝石セットはショーメが手掛けているから。そこで、ナポレオンの肖像画を観察し、ルーブル展で学んだ権力者のコード、服装持ち物ポーズなどをチェック❗(^-^;特にショーメだから金の月桂冠や正義の手の杖など宝石セットを観察ね。

この宝石セットを製作したショーメの創業者、マリ=エティエンヌ・ニトについてはは、フランス革命期、マリーアントワネットの日本の漆器コレクションが売却危機にあったとき、これは貴重なので保存すべきと鑑定したという逸話も紹介されていた(最後の部屋にマリーアントワネット漆器コレクションからの展示もあり)。まさに歴史の中のショーメ。

皇帝ナポレオン1世より贈呈された教皇ピウス7世のティアラ←あ、これもティアラなのか!

なんでも、ヴァチカンが普通は貸してくれない(;'∀')そうなので、それもこれも歴史の中のショーメのおかげでこうして日本で観ることが!

 

圧倒的なティアラ尽くし部屋は是非体験を!

豪華ティアラがこれでもかと並びくらくらする。

お気に入りはパンジーカーネーションの2点かな。

 

豪華ティアラばかり見てたら、このナポレオンの最初の妻ジョゼフィーヌの麦の穂のティアラのセンスの良さがじわじわくる(実は最初ピンとこなかった(^^;)。

メインビジュアルになってるの↓

ジョゼフィーヌは麦の穂、娘のオルタンスはオルタシア(あじさい)

この繊細なあじさいのジュエリーが実は一番好みだった(これくらい控えめなのが、と言いながら充分豪華。ゴージャスなものをたくさん見た後なので)。

あと、最後のお部屋で雷神の太鼓がタンバリンなのもチェックね❗(^-^;

 

ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界-1780年パリに始まるエスプリ」展は三菱一号館美術館で2018年9月17日まで。

暑いので東京駅や二重橋前駅から地下でつながっててホントありがたい。観光にもおすすめ。

 

動物たちの息吹

ホテルオークラ東京で8/23迄開催中の第24回 秘蔵の名品 アートコレクション展 動物たちの息吹のブロガーナイトに行ってきました。※写真は特別に許可を得て撮影

 

恒例のチャリティーイベント、普段なかなか観られない企業の社長室にかかっているような秘蔵の名品が出品されるので毎夏の楽しみ。

ここ数年は友人と一緒に観る約束をしており今回ブロガーナイト行くこと報告したら一緒に連れてけ~と言われ(無理す(;^_^A)見どころをしっかり聞いとくからと約束、東京藝術大学の熊澤弘先生の解説を必死になって聞いてきた。

※文中「」が解説で聞いたお話の引用部

 

展示は3章立て。登場する動物も分かれていた。

 

◆第1章 田園のなかの動物 西洋と日本

風景画と暮らしの中の動物たち。牛や馬など。 

ライスダールとゲインズバラの並び

「是非少し引いた場所から鑑賞してみてください」と。 

 

熊澤先生解説のヘルブラント・ファン・デン・エークハウト《ユノ、エピテル、そして牛に変身させられたイオ》

レンブラントの弟子の作品。ユノ(真ん中の女性)がレンブラントの《ユノ》の顔に似ている」←あらかじめ《ユノ》の画像検索して似てるかどうか会場で確かめるのも楽しい

解説によると、奥さんのユノ(ヘラ)が来たのでユピテル(ゼウス)が愛するイオを牛に変身させた場面←いわゆる修羅場(;'∀')。ユノの表情もだけど、この牛の憮然とした表情が。牛の普段の顔?でも物語を聞いた後だと擬人化して見えて。

 

中央 ジャン・フェルディナン・モンシャブロン《牧場》1888年

「明るい風景表現でモネの最初期と同じ。朝になってきた表現、横からきた光が木々に当たっているとことろ」を観てね

一番左 浅井忠《牛追い》1906年

大原女が牛連れててこれは好きだなと。制作年が亡くなる前の年。『浅井忠の京都遺産』展で忙しすぎて過労死か、という話を聞いたので気になった。

 

◆第2章 動物画の魅力 江戸から近代へ

みんな大好きかわいい犬猫はここ。最近の猫ブームで猫だらけ展頻繁にあり、当館の猫ちゃんは○○へ出張中の貼り紙で悲しい思いをすることも。でもまとまって観てみたいよね。←本展覧会で実現!特に虎が圧巻。

それは、ホテルオークラ東京が虎ノ門にあるので。。。

いやこれ冗談じゃなくそういう企画なんだそう(^^;

まずはバーンとこれを!

いやはや。会場のアスコットホールにずっとあってもいい感じ

この右側にもトラトラトラで宮内庁三の丸尚蔵館竹内栖鳳《虎》が!(写真不可なので載せられないけどこれは是非会場で体験を)

大橋翠石《虎図》いい表情。

「虎の画家といえば大橋翠石。岐阜の画家で地域の画家」なかなか関東では見られないとのこと。

そして虎と虎の間に挟まる「無敵の猫」来た!

アイコンにもなってる黒猫ちゃん。菱田春草《黒猫》

小冊子によると有名な《黒き猫》の前に描かれた作品で、春草は特に猫好きというわけではなく借りてきた猫が逃げて困ったエピソードも。絵でも警戒してる感がすごく出てる。今回の展示ではなんと春草の黒猫ちゃん2点《柿に猫》も並んで展示。私はこの警戒感いっぱいの猫ちゃんがいい!

そしてこれ。

橋本関雪《暖日》1929年

神ががかってる。絶対に人間の言葉喋る。

という個人的な感想はさておき制作年をチェック。

「1930年のローマ展(日本美術展)を開催するにあたり(オークラの)大倉喜七郎横山大観をはじめとする画家たちに依頼、そのため前年の1929年には面白い作品が多い。大観《夜桜》も昨年展示の清方《七夕》も1929年作」

 猫と言えばの藤田嗣治の猫も1点あり(現在大規模藤田嗣治展開催中につき1点みたい(^^;)。

そのほかの動物や、山口華陽の動物画の数々もこの章に。

 そして、実は一番楽しみにしてた応挙犬!芦雪犬!!

なんと、昨年『長沢芦雪展』にてこれは!と思った《洋風母子犬図》と《一笑図》が並んでる!!

左から円山応挙《十二支図の内 菊狗子》長沢芦雪《一笑図》《洋風母子図》もうこの並び好きすぎる❤

「《洋風母子犬図》は、すみだの宝(すみだ北斎美術館所蔵)。洋画風の厚塗りで白の部分はまるで油絵のきれつのようなものも。入念に描かれた表現」に注目。

これは昨年の展覧会で観てとても不思議で、暗い背景に厚塗りの入念描き洋風画が数点展示(大規模芦雪展では初展示とあった)図録には諸説あって謎みたいな話が載っていて、とにかくまたここで観ることできてうれしい。今後すみだの宝って呼ぼう。是非近くで観てね。

《一笑図》は竹+犬=笑。これ見ると、ほっと心和む。右のゴロンねしてる後ろ姿の黒白犬。よく芦雪の絵にはこの後ろ姿の黒白犬が出てきて、ちょっと離れたところで後ろ姿で絵の中を見てて、これは芦雪自身なんじゃないか(という文章もあった気が←うろ覚え)でもこの一笑図見て改めてそう思った。遊んでる犬と子供を見守ってるの。よく見るとすみだの宝の子犬もこの黒白ゴロンね犬なので、そうしたらほほ笑む母犬は芦雪の母に。

 芦雪ばかり観てたから大好き応挙犬が疎かになってしまった。もう一度来ます。

 

第3章 花鳥繚乱 美しき鳥たち

沈南蘋も!《鴛鴦図》これ帰国したあと描かれた作品で近代になってから日本に入ってきたのだそう。

渡辺省亭もあります←もう見どころが多すぎて収拾がつかなくなってしまった。

次の部屋にもずらっと花鳥画。上村松篁、上村淳之親子競演などみどころたくさん。

今回の解説では、作品とともに所蔵先のお話も併せてあって興味深かった。例えばあいおいニッセイ同和損保は椿のコレクション(本展にも3作展示)、きものの千總コレクション千總ギャラリー、大橋翠石の田原市博物館、広島の美術館の数々、ウッドワン美術館海の見える杜美術館ひろしま美術館、今後行ってみたい美術館が増えた。

なお今回の西日本豪雨災害で美術館は無事だったけれどスタッフの方の家が被災したなどいろいろ大変で、というお話も。そんな中、広島からやってきた作品も多いので是非足を運んでください。

 

最後に一枚。

小倉遊亀《晴日》

もうずっとこのワンちゃんみたいに木陰で涼んで休みたい。

 

チャリティーイベント 第24回 秘蔵の名品 アートコレクション展 動物たちの息吹は、ホテルオークラ東京にて2018年8月23日まで。

2019年2020年は開催されないそうなので(リニューアルオープンやらオリンピックやらでホテルが忙しくて)今年絶対行っといたほうがいいと思います(^^;

約束した友人ともう一度行ってグッズを買い求めます(どれもかわいい。時間がなくて選べなかった)。

 

 

モネ夜間鑑賞会

横浜美術館で開催中の「モネ それからの100年」展の夜間特別鑑賞会に行ってきました。写真は夜間特別鑑賞会のため特別に撮影許可がおりました。

 

みんな大好きモネ!モネ展というとわっと人が集まるそうで、そういう自分もモネの名前に釣られモネ展?!じゃ横浜行こ!でやってきた。

ただし展覧会内容詳しく把握してなくて、メインビジュアル(上写真)がモネの睡蓮なんだからモネ作品と供にモネにインスパイアされた現代アート作品が後半ちょっと並ぶ、のかな?あくまでメインはモネという感じで来た。現代アートは少しは見るけどそれほど興味がある方ではなく。。。実際自分と同じような感じでこの展覧会に来た人多いんじゃないかと(^^;

でも、そういうんじゃないです。

がっつり現代アートの展覧会。出品作品数の90数点のうちモネは25点。点数でいうと少ない気がするが、これが不思議、観終わった後

嫌っていうほどモネ満喫したわ!

となる。

もう展示マジック(キュレーションの力)と思う。

会場入り口の様子

この群馬県立近代美術館の《睡蓮》、昨年群馬で見たときガラス無展示に驚き、細部までまじまじと観て、近年見た中でこれが一番好きかも!と思った作品が冒頭にあって最初からテンション上がる。

そして右の文章を読み、確かに抽象の先駆けと思ってはいたけれど果たしてそこまで(モネはあらゆる現代美術の生みの親)?このあとガッテン!となるか。。。

展示は4章構成で各章にモネ作品、それに呼応する(対決する?)現代アート作品が並ぶ。一緒に並んで違和感なし。章立ての切り口に納得して観てるからかと思う(それは見る人それぞれの判断)。

 章立ては

Ⅰ新しい絵画へ 立ち上がる色彩と筆触

Ⅱ形なき物への眼差し 光、大気、水

Ⅲモネへのオマージュ(この章にはモネ作品なし)

Ⅳフレームを超えて 拡張するイメージと空間

表題の「モネそれからの100年」のそれとは、モネがオランジュリー美術館の《睡蓮》大作群ぐるっと睡蓮(と勝手に呼ぶ(^^;)を手掛けてからほぼ100年という意味だそう。※ブログ最後尾に年表

 

各章のモネ作品と共鳴する現代アート作品を鑑賞し、この章立てによって体系的に、自分がモネのどこが好きなのか、今までのなんとなく好き色が好き以上に、もう少し人に筋道立って説明できるくらいになった。それは、もともと思ってた色の喜びと(Ⅰより)、光大気水など遷ろう捉えどころのない何かを描いているところと(Ⅱより)、空や大気や様々なものが反射する揺らめく水面、空間に広がりを感じるところ(Ⅳより)。そもそも睡蓮という主題はそういう作品だった。切り取られた水面がフレームを超えて無限に広がっていく。

(あれ?でもモネは最終的にオランジュリーの大作に向かったということは、睡蓮の小さなフレームで無限の広がりを表すのでは満足できなかったんだろうか?最初みたときぐるっと睡蓮ならもうちょっと繋げて描けなかったのかな?キャンバスの制約なのかブツブツ切れてる感があると思ってしまった。もう何年も前であやふやなのでもう一度体感してみたい)

(そういうこと考えてたら、あの横浜美術館の正面入り口に掲げたモネの睡蓮を9分割にして掲げたパネルいいね!小さな睡蓮を拡大して9枚のパネルに。物理的な理由かもしれないけれどフレームを超えた広がりを感じる)

 

ちなみに、モネ作品のないⅢのオマージュが結構好きな作品が多かった 。Ⅰにあったルイ・カーヌ《彩られた空気》下写真左も。

というわけでモネの革新性を知り、魅力を更に深く感じられるモネ展だけど、しっかり現代アートにも魅せられて帰ってきた。

 「モネそれからの100年」展は横浜美術館で2018年9月24日まで。

 

※モネ年表

モネカッコいいよね。

うるしの彩り

泉屋博古館分館にて開催中の「うるしの彩 漆黒と金銀が織りなす美の世界」ブロガー内覧会に行ってきました(写真は特別に許可を得て撮影)。

古いものから近代まで。東京初上陸多数とのこと。

右《誰ヶ袖図屏風》と左実物!

第一室は能とうるし、香道茶道とうるしなど、副題の”漆黒と金銀が織りなす美の世界”ままの豪華な展示品が並び、華やかな香箱などに目を奪われながら、やはり一番はこれ↓

原羊遊斎の椿蒔絵棗(下の方の赤い地に金銀の椿が一枝のモダンなうるし)。デザインは酒井抱一。こんな感じの椿の絵ですけどどうですか~?という抱一の書状と一緒に展示(左上の軸)。さらに、右には尾形乾山の椿図もかかっていて、椿の花のふんわりした柔らかさや葉の感じはここからか?と思わせる。キャプションによると抱一の箱書があり原羊遊斎も目にしたかも、とあった。乾山→抱一→原羊遊斎のつながり。

とにかく豪華な展示!!

抱一の下絵も抜群。とはいえ、このささーっと描いた風(^^;の下絵の本質を見事に立体化してる原羊遊斎も凄い。ちょうど「大名茶人 松平不味」展で原羊遊斎(1772-1845)が多く出ていたのを見た直後で、一気に興味高まる。まとまって展覧会あるといいなあ。

 

第2室はアジアの様々なうるしと日本の近代のうるし。今まで興味持ってなかった分野なのでこちらがまたどれも面白くて。

特に中国のうるし、螺鈿と彫漆。螺鈿も見応えあるけど特に彫漆!高価な漆を何重にも塗り重ねて彫れるほど塗り重ねて彫る(+_+)想像を絶する贅沢さ。さすが中国皇帝が愛したうるし。

展示されている長方形と円いお盆。黄色の漆でともに龍が彫ってある。黄色は皇帝のシンボルカラーで龍は皇帝のシンボル。トップレベルの2点なんだそう。

皇帝の龍は爪が5本だけど四角いお盆の龍の爪は4本。市場に出るときに5本だとアレなので(-_-;)4本に削られたためと。

元の螺鈿と明の彫漆、ともに消耗品だったため本国中国にはあまり残っておらず、逆に使わず宝物として大切にしてきた日本にこういうトップレベルの品があるのだと。なるほど。見ることできて良かったー!

それと、最後にもう一点お気に入り。これはうるしでなくて、明の唐子図螺鈿長方盆の横に展示されていた江戸時代の唐児遊図屏風。とにかく遊ぶ様子がかわいすぎ!(写真の一点撮りはできないので、是非会場で詳細を見てください!)

 つながる日本美術というかメタモルフォーシスというか(^^;作品の楽しさと作品の並びの楽しさがある展示だった。

 「うるしの彩り」展は、泉屋博古館分館にて2018-7-16まで。7月の3連休までなのね。もう一回落ち着いて観に行きます。