うさこ観覧記

またブログ始めました。展覧会観て自分のために何か残さないとすぐ記憶が流れていくから。

3回目のヘレン・シャルフベック魂のまなざし展

昨年芸大美術館で2回通ったヘレン・シャルフベック展が今度は葉山に巡回。3回目はSNSユーザー会で訪れることができました。

神奈川県立近代美術館葉山館にて。

芸大美術館での展示では、女性画家で一生独身だったから?婚約破棄や失恋など恋愛沙汰押しな感じがして、そういう文脈でみると、最後の老いた自画像を冷徹に描くことが痛々しく(実際会場でそういう感想を話し合ってる女性グループがいた)、なんだかちょっと違和感を感じてた。確かに心模様が絵に反映されていたりするけど、そういうの考えずに見てみたかった。

 

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ヘレンシャルフベック魂のまなざし展の様子。左の絵は「快復期」。SNSユーザー会にて許可を得て撮影。 #神奈川県立近代美術館葉山

幼いころより足が不自由。でも絵の才能があり、「雪の中の負傷兵」で早々と認められパリに留学。パリでさらに画力をつけ「快復期」で名声を得る。ヨーロッパ各地を旅して作品を描き、若い時から順風漫歩の華々しい人生に思える。

ちなみに「快復期」は希望のメッセージが込められたフィンランドの人々に愛される国民的絵画なのだそう。

さらに、フィンランド芸術協会に唯一の女性として依頼され自画像を作成。後半生は若いころのように外に出ていく生活ではなかったけれど、絵画制作を死ぬ間際まで続け、あの老いていく自画像群を冷徹に新しい試みを入れながら描き続ける。なんと旺盛で充実した人生なんだろう。

葉山での展示では、まっさらな状態で絵に向き合って静かに鑑賞できた。透明で広い展示空間。以前もっとぎゅっと詰まった感じで観た時に、ひと際明るい色調に見えた絵も、こうしてみるとやはり抑え目な北欧の薄い光の中で描かれた絵に見えた。そして改めて大作がほとんどない。ぽつりぽつりと展示される様子は、ちょっと寂しげでもある。ただ、そのそっけない展示の中、近づいて向き合ってみると暖かく親密で充実ぶりが感じられる。

展示空間と彼女の作品の雰囲気がぴったりだった。

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好きな絵がたくさん。左上の「堅信式の前」と左下の「妹に食事を与える少年」も好き。ヘレン・シャルフベック魂のまなざし展より。SNSユーザー会にて許可を得て撮影。 #神奈川県立近代美術館葉山

右上『日本の花瓶に入れたスミレ」。ジャポニスムの作品も。右下「鉢を持つ少女」。

彼女の描く子供の絵は本当にかわいらしく、若い女性の絵も魅力的。まなざしが暖かいのだ。なのに、自画像は厳しく冷徹。

彼女の絵にひかれるのは、自分に厳しく他人に優しい、凛としていてあたたかいまなざしを感じるからかもしれない。

写真の左の図録の表紙がフィンランド芸術協会に納めた自画像。

日本でヘレン・シャルフベック展が開かれるまで名前も知らない画家だったけれど、この自画像には見覚えがあった。もうずっと以前ヘルシンキアテネウム美術館に行ったときに観たようだ(写真の右の本がアンテネウムガイド、シャルフベックの絵が何点も載っていた)。一度観た絵画は忘れないという程記憶力がいいわけではないけれど、この自画像には引き付けられる何かがあった。ぱっと遠くから見ると頬のピンクと白いブラウスにブローチのせいか、かわいらしい絵に見え、近づくと黒い背景に薄く墓碑銘のようなものも浮かび寂しげでもあり冷めたような感じ。でもどこか誇らしげで。しーんと静かなのに強い意志が感じられる。とても印象に残る絵。今回しみじみ見てそう思った。

 葉山の海。

 

ヘレン・シャルフベック 魂のまなざし

ヘレン・シャルフベック 魂のまなざし