スウェーデンの理想の暮らしカールラーション展
カール・ラーション スウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家(東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催中)のブロガー内覧会に行ってきました。
※写真は特別に許可を得て撮影
日本では1994年にカール・ラーション展があり今回が2度目。1985年には日本でも著作「わたしの家」が出版されており
線描の水彩画で子供や家の様子が描かれた絵は一度目にするとあら素敵と目が留まる、ので名前は知らなくても絵柄は知られているのでは。
私自身カール・ラーションが気になったのはIKEA経由。以前IKEAでカール・ラーションのグリーティングカードセットがあって購入、素敵だなあと思い昔訪れたスウェーデン国立美術館の図録をみてみたら魅力的に描かれた妻カーリンと子供を描いた作品が紹介されていた。そこにはスウェーデンで一番愛されている画家という解説が(美術館訪れた時は巨匠名画ばかりに気を取られ地元作家は飛ばし気味。本当はそういうのこそ見るべきと今は思うけれど。美術館の壁画もカール・ラーションが描く)。
◇カール・ラーション 1853-1919
日本で言うと幕末に生まれ明治から大正時代に活躍した画家。面白いのはスウェーデンも遅れて近代化の道を歩んでいた時代ということ。日本と同じだ。ただ、カール自身は革新的な人で反アカデミーで反体制派だった。そのことで1880年代パリに移り住むことに。このころパリはジャポニスム全盛期でカールもその洗礼を受けた。
メインビジュアルの《アザレアの花》(上写真右)は花を全面に大きく持ってくる大胆な構図と線描で描くという点で浮世絵の影響が顕著な作品。ただ線描に関しては元々挿絵画家ということもあったからとも(挿絵作品も展示あり)。
しかしなんといってもカール・ラーションと言えば
1.近代化していくストックホルムに大作壁画を描いた(スウェーデン国立美術館のフレスコ画)
2.家族との理想の家を描いた水彩画画集を出版し世界中で人気になった
本展覧会では2つ目の仕事について、同じく芸術家である妻カーリンの仕事も展示(日本初紹介)して「理想の家」がより立体的にわかるようになっていた。
◇理想の暮らし、理想の家《リッラ・ヒュットネース》
カールとカーリン夫妻は田舎の家《リッラ・ヒュットネース》を改装し、アンティーク家具に手を入れたりカーリンのデザインした刺繍などのインテリアで理想の家を作り上げ、そこに暮らす家族、普段の子供の姿、隣人の様子を画集にして出版した。当時大人と子供は同じ食卓を囲んだりしなかったし、絵に描かれた子供の姿は緊張した面持ちで普段の姿ではなかった。そういう時代にカール・ラーションが描いた子供や家族の様子、家の中の様子はインテリアを含めてスウェーデンの理想の暮らしであり、世界中で出版され人気となった。
アーツ&クラフツ運動ぽいと思った
カーリンの刺繍作品の中でこの花と蛙が一番好き
展示の最後にIKEAの家具で設えた今に生きるラーション・スタイルのコーナーがあり、これを見るとカールとカーリンが作り上げた理想の暮らしは今の私たちの生活にも影響を与えているのだなあというのがよくわかる。
昔カールがジャポニスムの影響を受け、今の私たちが北欧デザインを好み暮らしに取り入れる。全く繋がりがないように思ってたカール・ラーションが今の私たちの生活に深く入り込んでいるという不思議な繋がり。
カール・ラーション展は東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館にて2018年12月24日まで開催中。
最後にちょこっと感想:幕末から明治大正の日本の画家で反体制派の人ってどんな画家がいるのだろう。明治大正の日本の画家で思い浮かんだ横山大観などはばりばりの体制派。それとカール・ラーションは反体制派なのに国立美術館のフレスコ画を描くまで上り詰めたということが凄い(本人が転向したのならまた話は変わってくるけれど)。国を愛するというのは国土やそこに暮らす人々の生活を愛することであり、体制を支持するしないは別なので当然と言えば当然だが、日本の場合、国=体制となりがちで、反体制派の人が国立施設の壁画を任されたりしないだろうなあと思ったので気になった。
カール・ラーション スウェーデンの暮らしと愛の情景 (ToBi selection)
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