うさこ観覧記

またブログ始めました。展覧会観て自分のために何か残さないとすぐ記憶が流れていくから。

芳崖の弟子たち

知らなかった画家の面白い絵が出ている展覧会は楽しい♪

泉屋博古館分館で開催中の「狩野芳崖と四天王」展ブロガー内覧会に行ってきた。※写真は特別に許可を得て撮影

メインビジュアルは狩野芳崖が全面に出ているので芳崖が主な展覧会かと思いきや(実際芳崖が中心だけれど)メインはその弟子たちの紹介と再評価の展覧会のよう。副題が「近代日本画、もう一つの水脈」なので。

↓展覧会に登場する人物相関図。この色分けを把握してから観るとわかりやすい

展覧会の構成は、↑人物相関図の3色(黄色オレンジ黄緑色)が3章に

第1章 狩野芳崖狩野派の画家たち(黄色)

木挽町狩野の四天王と呼ばれた狩野芳崖、橋本雅邦、木村立獄の3人と狩野友信

第2章 芳崖四天王(オレンジ)

芳崖の弟子たち岡倉秋水、岡不崩、高屋肖哲、本多天城

第3章 芳崖四天王の同窓生たち(黄緑色)

橋本雅邦の弟子、朦朧体の四天王の下村観山、横山大観菱田春草、西郷孤月と木村武山

第1章と第3章に登場する画家はお馴染みなので第2章の芳崖の弟子たち(芳崖四天王)が今回の見どころか。同窓の大観たちに比べ埋もれてしまった画家たち。

 

明治の近代日本画というと狩野芳崖がいて橋本雅邦がいて、大観、観山、春草あたりは有名なので知っているけど芳崖四天王と言われるとちょっと(^^;。たぶん私のような一般の人はそんな感じなんじゃないかと。

だから断然第2章の芳崖四天王が面白い。

もちろん第1章の江戸時代の狩野派の画風に近代が入ってくる様子がわかる展示も面白いし、第3章のお馴染み大観春草の型破りな朦朧体の絵とその先も面白い。まあ全部面白い(^^;けれどここでは自分が一番面白かった第2章の芳崖四天王の展示を紹介。

 

◇岡倉秋水(1867-1950)

岡倉天心の甥。東京美術学校第一期生として入学後翌年退学。図画教育に従事。芳崖の顕彰に励み、作品の鑑定も。

不動明王》と《慈母観音図》

不動明王》は後期展示の芳崖《仁王捉鬼図》に似てるそうなので後期に確認。ぐるぐるの火炎に左隅が水色なのが気になる。

《慈母観音図》は後期展示の芳崖《悲母観音》を写したもので数点存在するため注文がそれだけあった証。西洋顔料を使っていてとても発色が鮮やか。これも後期、師の芳崖作品との見比べが楽しみ。ちなみに、後に紹介の高屋肖哲の《悲母観音図 模写》もあるのでこれも併せて。

 

◇岡不崩(1869-1940)

狩野友信に入門のち芳崖師事。東京美術学校入学後2年で退学。図画教育に従事。本草学を研究した学者画家。

《秋芳》と《群蝶図》

写真はうまく撮れてないけれど美しくてとても好きな絵。本草学を極めた学者だけあって植物画としても正確なのだそう。古典的でありリアリティもあり←大正時代の主流派と一緒。

 

◇高屋肖哲(1865-1945)

 芳崖に師事、東京美術学校一回生として卒業後、仏画師の道へ。

芳崖四天王の中で一番好きかも。菱田春草も好きだけど。

本展覧会の見どころか。真ん中の絵《千児観音図 下絵》

これは是非実物を。芸術新潮2018年5月号「永久保存版 これだけは見ておきたい 最強の日本絵画100」の中で泉屋博古館分館長が押してた記事読んでたので、実物!とびっくり(記事もう一度読んでみたら本展覧会で出ますと予告されてた(^^;)

本画は行方不明なんだそう。観てみたいなあ。

前期展示の《武帝達磨謁見図》の中に一人こちらを向いてるおじさんがいるのだけど、それが高屋肖哲本人では?というお話も。

今回パネル写真で紹介されていた高野山三宝院襖絵《高野物狂》全26面(そんなにあるの!)というのも是非観てみたい。

 

◇本田天城(1867-1946)

西洋画を学んだ後芳崖に入門。東京美術学校に入学し卒業後は同校で助教授を務めた。

左の山水が本多天城の絵、だけどちょっと遠くの写真なので是非間近で。

なんか不思議な山水で、西洋と東洋のミックスというか遠景が西洋風の山水風景画?

やっぱり第3章の人たちともリンクしてる。

 

以上が芳崖四天王。

高屋肖哲は仏画だけど皆教育の方に行ってしまったのも埋もれた一因とも。

 

今回初めて知った芳崖四天王は観山、大観、春草たち朦朧体四天王と同窓生。絵も見応えあって面白いし、何より興味深いのは変遷を経て結局は芳崖四天王も朦朧体四天王も到達地点が同じような場所だったということ。朦朧体四天王が日本画から線を無くし光を描こうともがいて型破りな朦朧体の時期を経て再び線を取り戻したときの絵と、芳崖の弟子たちが芳崖の教えを継ぎ型を守りながらそれぞれが到達した絵が同じような感じという…。

なお、型破りな人たちが型の方へ収束していったのは、戦争の時代もあり東洋を重視する時代背景もあったという解説も。

今まで芳崖、雅邦⇒観山、大観、春草という流れが主流と思われてきたのが、もう一つの水脈(芳崖四天王)というのがあって、この二つの流れがまた同じところに向かっていく。そういった近代日本画の流れが展示を通して俯瞰できる壮大な展覧会だった。

菱田春草《春色》《海辺朝陽》ともに前期展示

前期後期で作品の入れ替えがあり、芳崖の重文2点《非母観音》と《不動明王》は後期に登場するので、是非芳崖四天王の作品と見比べたいから後期も見逃せない。展示替えが多いので前期後期両方いくのがよいかも(^^;

 

狩野芳崖と四天王 近代日本画、もうひとつの水脈」展は、泉屋博古館分館にて前期が10月8日迄、後期が10月10日~10月28日迄。

 

芸術新潮 2018年 05 月号

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