江戸の空気、女性の暮らしの様子を描く国貞
静嘉堂文庫美術館で開催中(3/25迄)の歌川国貞展のブロガー内覧会に行ってきました。写真は特別に許可を得て撮影。
国貞だけの展覧会に行くのは初めてか。二年前の「俺たちの国芳わたしたちの国貞」展でも、キラキラ国貞いいなあと思いながらやっぱり国芳の方が面白くて好きかなと思った。実際国芳展や北斎展の方がよく目にする。最近「北斎とジャポニスム」展まであって、現在の人気で言えば断然北斎や国芳と思うのだけど。
歌川国貞(1786-1865)
歌川国芳(1798-1861)
葛飾北斎(1760-1849)
毎回展覧会の初めに生没年をメモしてから観覧する。
今回はチケットを持っていたので鑑賞してからブロガー内覧会に参加し解説を聞く。解説でまず驚いたのは、当時ナンバーワン浮世絵師は国貞であって国芳でも北斎でもないと。現在の私たちの感覚からするとびっくり。でも江戸時代の人々が現在の人気状況を知ったらもっとびっくり!
国貞がなぜ人気だったのかはまず画業の長さ。それも79歳までほぼ50年間第一線で活躍。最初から質の良い作品を量産し、最低でも1万点、2,3万点はいくかも、それは北斎より多い作品数だそうだ。
静嘉堂文庫には約4千枚ほどの国貞があり画帖仕立て(アルバム上に貼ってある)にして明治の岩崎家の女性たちが古きよき江戸の空気を懐かしむように、女性たちのくらしやファッション(着物やかんざしなど)を鑑賞していたのではないか、というお話だった。
浮世絵美人画といっても遊女ではなく主に普通の女性の暮らしの様子が描かれているのが国貞と。
子の世話を焼く母の姿や(上写真)、化粧鏡に映る女性の表情など、当時の暮らしの様子が描かれ、女性たちが身近に感じられる。先日江戸深川資料館に行ったとき、江戸の暮らし紹介パネルでちょうどこの2枚がパネル展示されていて、右の行水を嫌がる子供の表情やそれを眺める犬2匹、左の母衣蚊帳(ほろがや)というのを初めて知ったのでよく覚えているのだけれど、ここで本物が並んで展示されていたとは!
下写真左側の女の子はお歯黒塗り失敗してありゃりゃの表情。
下写真真ん中の蚊やきというの、ここで初めて知った。蚊を手でパチンとか無粋なことをしないのか?右の重そうな桶を運ぶ女性と足にまとわりつく犬いい!
「卯の花月」下写真。
初夏の初鰹でわいわいしている長屋の人々の賑やかさ。この絵からも江戸の暮らしがいろいろと読み取れるそうで、染付の皿が既に庶民の手にいきわたっているのが分かる。真ん中上の赤いバッグみたいなのは何かなあと思ったら、体を洗う赤いスポンジを乾かしているのだそう。左隅では大根も下ろされてる。見てて本当に楽しい。
しましま見本帖。
画帖仕立てのおかげで、紫、薄ピンクなどの本来なら残りづらい色が残っているのだそう。
とにかく、今回の展示ですっかり国貞ファンになってしまった。絵の鑑賞というより江戸時代の暮らしの様子は?と思いながら見るの楽しい。江戸の女性たちの生き生きとした様子、暮らしぶり、着物の柄など、見ていて飽きない。
役者絵も本展覧会の見どころなのだけれど、今回はすっかり魅了された美人画の方ばかり写真を撮っていたので紹介がそちらに偏ってしまった。
最後に一番長いこと見てたのは下写真の肉筆画。芝居を鑑賞する人々の表情や様子が細かく描き分けされていて、国貞の肉筆画は珍しいそうなので、その点でもこれは見ておかないと!
展示は前期後期で全て入れ替え。また来ないと(^^;
歌川国貞展は静嘉堂文庫美術館にて、前期1/20~2/25、後期2/27~3/25まで。