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うさこ観覧記

またブログ始めました。展覧会観て自分のために何か残さないとすぐ記憶が流れていくから。

挿絵本の愉しみ方を教わる

静嘉堂文庫美術館で開催中の「挿絵本の楽しみ」展のブロガー内覧会に行ってきた。

直後に上げたInstagram

https://www.instagram.com/p/BTF5TQwDOrf/

#挿絵本の楽しみ ブロガー内覧会。直前に絵巻マニア列伝に行って挿絵本へ。トークショーでもこの二つの展覧会を見て違いを考えると面白いというお話が。※写真は特別に美術館の許可を頂いて撮影 #挿絵 #文庫

当日のトークショーにて橋本麻里さんから「同時期に挿絵本と絵巻の展覧会が開催されています。挿絵本と絵巻、絵と文という点で同じ、そこで違いを考えながら鑑賞すると面白いのでは」というヒントをいただく。

たまたま直前にサントリー美術館の「絵巻マニア列伝」展を鑑賞していたので、なんとタイミングがいいこと!

絵巻と挿絵本、何が違うかというと、形態、目的、読者。

例外はおいて大雑把にいうと-

絵巻は手描きの一点もの、主目的は物語を見て楽しむ、読者は天皇や貴族。絵巻そのものが権力の象徴でもあった。

挿絵本は印刷物中心、大半が木版画で複数存在し、目的に物語も含まれるけれど絵解き、参考書、解説、記録などの情報伝達と多岐に渡る、読者はより広く一般大衆まで。

ここを押さえておくと、挿絵本の特徴がわかるし、挿絵本世界の楽しみ方がわかるしくみ。素晴らしい。

トークショーで聴いた中国における挿絵本の広がりについて、中国は元々文字の国で絵がつくのは結構新しく爆発的に広まったのは明時代。そのきっかけは明の前の宋時代に貴族ではない一般の子供たちが科挙を受けることになったこと。文だけではわからない絵で解説しないと、という切実な要望が。そうやって受験参考書として絵付きの挿絵本が広まったのが下地としてあり、明時代になると経済が活性化し印刷物にお金を使える人が増え挿絵本が爆発的に広まったと。

挿絵本が何故作られ広く頒布したのかは社会の要請、需要があったから。挿絵本は社会の反映。

なるほど。挿絵本の目的と社会背景を考えて見る。それが一番の楽しみポイントかも。

もちろん、絵が楽しい美しいという楽しみ方も可。

  • 岩崎灌園「本草図譜」1844頃写  

個人的に一番面白いと思ったのは、記録する挿絵本のコーナー。旅行記や漂流記など。これは絵があってこその分野と思ったのと、とにかく内容が面白い、あと時代背景も。そして知らない世界、行ったこともない世界を絵が説明する情報量の多さ。

「東韃紀行」あざらし物々交換

記録する挿絵本で気になったの、もっと他の頁も見たいなあと思ったのは-

  • 司馬紅漢「西遊旅譚」1974刊:1788年司馬紅漢が一年かけて長崎平戸を旅した旅の記録。それは見てみたい。
  • 山本清渓「あたみ紀行」1807年写(自筆):なんか急に緩い感じでこれも。
  • 間宮林蔵・村上貞助「東韃紀行」19世紀写:樺太(サハリン)が島であることを発見、間宮海峡の人。間宮林蔵のことは教科書で習った程度、このように挿絵入りの詳細な本があったとは。探検の様子が絵で。
  •  大槻玄沢・志村石渓「環海異聞」19世紀写:1793年石巻から江戸に向かう乗員16名の若宮丸が難破、8カ月後(え?!)アリューシャン列島の島に漂着。シベリアを経てペテルブルクにて皇帝に謁見!1804年(漂流から11年後‼)希望した4名(残りの人は?)がロシア艦にて長崎に帰着。同行したロシア使節ニコライ・レザーノフは日本に通商を求めたが幕府は拒絶。帰りしなに択捉、利尻、国後を攻撃して帰る(えー!そんな)。もう経緯を読んだだけでびっくり仰天な内容な上、またこの挿絵が。紹介されている分だけでも興味津々。観覧車のようなものまで書かれていて、この時代に既にあったのか、など。それとこの事件は幕府が北方警備などに目覚めるきっかけとなったと解説あり、今の北方領土問題にも通じる出来事。

とにかく、漂流記面白い。解説によると近世全体で確認されているだけで400件も漂流があったそう。海に囲まれた国だからね。。。鎖国で(最近は鎖国という言葉を使わないそうだけれど)限定的にしか海外情報が入ってこない時代に、この生の海外情報は幕府によって厳重に調査され文書に残されたと。こういった時代背景や情報管理も興味深い。

他の挿絵本も-

  • 「機構図彙」1796刊:からくり人形などのしくみを解説した本で、今でもこれをみると再現可能なほどで、海外からの評価が高い。
  • 「永楽大典」明時代写:明時代に永楽帝の命により編纂された一大類書(百科事典のようなもの)。名前だけ知っていたものが静嘉堂文庫にあるとは。現存するのは世界で400冊。中国は国家プロジェクトでデータを集めていて静嘉堂文庫の8冊のデータも収集されたそう。貴重。あ、永楽大典も権力の象徴では?
  • 「琵琶記」明時代1610年頃刊:物語の挿絵でとにかく線が細かい!江戸時代の浮世絵の彫と摺りの細かさもこのあたりからの影響という解説があった。

こんな感じで、たぶん全冊逸話や社会背景など解説を聞けば面白いこと間違いなしの目を見張る挿絵本がたくさん紹介されているのだけど、絵に一番惹きつけられたのはこれ。

  • 妙法蓮華経変相図」南宋時代前期(12世紀)写:変相図とは仏の教え、仏の世界を絵で表したもので、庶民にわかりやすい絵解きになってる分、なんだかゆるかわの絵が。細かいエピソードがびっしりと書き込まれており、その中でキャプションがついていた「火宅の譬え」では、燃え盛る火に包まれたおうち(苦と煩悩にみちみちてるこの世)の周りで遊ぶ子供たちに楽しげな牛車、鹿車、羊車で誘って外(悟りの世界)に連れ出そうとしている絵が。

妙法蓮華経変相図は初公開だそうで、これが見られただけでも行ってよかったなあと思った。渡辺崋山の重文の「芸妓図」もあったし。なにより挿絵本の世界の楽しみ方を知ることができたし。

「挿絵本の楽しみ 響き合う文字と絵の世界」展は静嘉堂文庫美術館にて4/15から5/28まで。

※写真は美術館の許可を得て撮影。

お庭も素敵