うさこ観覧記

またブログ始めました。展覧会観て自分のために何か残さないとすぐ記憶が流れていくから。

シャセリオ―に魅了される

https://www.instagram.com/p/BRInHYgj4Bw/

西美web内覧会に行ってきた。シャセリオー?誰?状態で😅でもこの前通る度に魅惑的な彼女の肖像画見てみたいなあと思ってたから前売券は購入済みだった。 #シャセリオー

 

 国立西洋美術館で開催されるあまり馴染みのない画家の展覧会は行った方がいい。絶対楽しい。最近ではメッケネム、ホドラー、ちょっと前ではハンマースホイ。という訳で今回もそう。

シャセリオ―のこと全然知らずに観に行って、帰りがけにはすっかり魅了されてた。内覧会の一時間ではとても足りない。

シャセリオ―(1819-1856)、新古典主義のアングルの弟子として出発し、途中から新古典主義の反対側にいるロマン主義ドラクロワに傾倒する。どっちも制覇のいいとこどり?シャヴァンヌやモローが私淑したシャセリオ―という説明を目にして、なんとなく感じが掴めた。

最初はシャセリオ―が16才の時に描いた自画像から始まる。

16才でこれ。彼の内面まで描かれてるこの完成度。11才でアングルに弟子入りっていう所で飛びぬけて絵が上手い人なのがわかる。

シャセリオ―はカリブ海イスパニョーラ島出身のクレオール(植民地生まれ)でオリーブ色の肌に厚い唇とエキゾチックな容姿、フランス社会の中では容姿が劣ると(まあ外国人の私からはわからない劣るとか劣らないとか)しかし優雅な雰囲気を持った人だったそうで、確かにこの絵でもそれが伺えナイーブで心に秘めたものがある複雑な人物に見える。

会場では自画像の横に父と自分を重ね合わせたような《放蕩息子の帰還》(左隅の犬がかわいい)が並び、ここから彼の人生と絵画を辿っていくと、師匠アングルとの方向性の違いからの別離、人気女優との2年の恋のエピソード、そして37才で若くして亡くなる話まで、出自から若い時の自画像そして夭折まででセンチメンタルな気分に。なんといってもこれからというときに亡くなってしまうのが哀しい。おまけに代表作の大作、会計検査院(現在のオルセー美術館の敷地)の大壁画が燃えてしまったというのも。

ギュスターヴ・モローは、シャセリオ―の死を悼み、《若者と死》という作品を仕上げていて、この絵から受けるシャセリオ―の人生の印象が最後決定的。

f:id:usacofu:20170228130941j:plain

展示では、19世紀フランス絵画でシャセリオ―と呼応する作家たち(アングル、ドラクロワクールベ、ルドン、モロー、シャヴァンヌなど)の作品も並び、シャセリオ―がどんな位置にいたのかもわかるし影響受けた与えた関係もわかって理解が進むし観ていて面白い。

冒頭の《カヴァリュス嬢の肖像》に代表される肖像画群、オリエンタリスムなど、他にも見どころ、心が動いた絵がたくさんあって一時間ではとても味わいきれなかった。

f:id:usacofu:20170228132253j:plain

シェイクスピアが流行ったこと、オリエンタリスムが流行ったこと、新古典主義ロマン主義、そこから象徴主義に至ること、ヴェネツィア絵画の系譜など、今まで断片的だった知識がシャセリオ―によってなんとなく繋がった、自分の美術鑑賞にも有益な展覧会だった。

オリエンタリスムが流行って他の作家たちがそういうエキゾチックな絵を描くのと、クレオールであるシャセリオ―が描くのでは全然違うのではないか。多様性を尊重する目で描いているのではないか。というのを後から思ったので、そこも確認してみたい。

とにかくもう一度訪れないと。

シャセリオ―展19世紀フランス・ロマン主義の異才」は上野の国立西洋美術館にて5/28まで。

 

※写真はweb内覧会の様子で特別に許可を得て撮影されたもの。