うさこ観覧記

またブログ始めました。展覧会観て自分のために何か残さないとすぐ記憶が流れていくから。

芳崖の弟子たち

知らなかった画家の面白い絵が出ている展覧会は楽しい♪

泉屋博古館分館で開催中の「狩野芳崖と四天王」展ブロガー内覧会に行ってきた。※写真は特別に許可を得て撮影

メインビジュアルは狩野芳崖が全面に出ているので芳崖が主な展覧会かと思いきや(実際芳崖が中心だけれど)メインはその弟子たちの紹介と再評価の展覧会のよう。副題が「近代日本画、もう一つの水脈」なので。

↓展覧会に登場する人物相関図。この色分けを把握してから観るとわかりやすい

展覧会の構成は、↑人物相関図の3色(黄色オレンジ黄緑色)が3章に

第1章 狩野芳崖狩野派の画家たち(黄色)

木挽町狩野の四天王と呼ばれた狩野芳崖、橋本雅邦、木村立獄の3人と狩野友信

第2章 芳崖四天王(オレンジ)

芳崖の弟子たち岡倉秋水、岡不崩、高屋肖哲、本多天城

第3章 芳崖四天王の同窓生たち(黄緑色)

橋本雅邦の弟子、朦朧体の四天王の下村観山、横山大観菱田春草、西郷孤月と木村武山

第1章と第3章に登場する画家はお馴染みなので第2章の芳崖の弟子たち(芳崖四天王)が今回の見どころか。同窓の大観たちに比べ埋もれてしまった画家たち。

 

明治の近代日本画というと狩野芳崖がいて橋本雅邦がいて、大観、観山、春草あたりは有名なので知っているけど芳崖四天王と言われるとちょっと(^^;。たぶん私のような一般の人はそんな感じなんじゃないかと。

だから断然第2章の芳崖四天王が面白い。

もちろん第1章の江戸時代の狩野派の画風に近代が入ってくる様子がわかる展示も面白いし、第3章のお馴染み大観春草の型破りな朦朧体の絵とその先も面白い。まあ全部面白い(^^;けれどここでは自分が一番面白かった第2章の芳崖四天王の展示を紹介。

 

◇岡倉秋水(1867-1950)

岡倉天心の甥。東京美術学校第一期生として入学後翌年退学。図画教育に従事。芳崖の顕彰に励み、作品の鑑定も。

不動明王》と《慈母観音図》

不動明王》は後期展示の芳崖《仁王捉鬼図》に似てるそうなので後期に確認。ぐるぐるの火炎に左隅が水色なのが気になる。

《慈母観音図》は後期展示の芳崖《悲母観音》を写したもので数点存在するため注文がそれだけあった証。西洋顔料を使っていてとても発色が鮮やか。これも後期、師の芳崖作品との見比べが楽しみ。ちなみに、後に紹介の高屋肖哲の《悲母観音図 模写》もあるのでこれも併せて。

 

◇岡不崩(1869-1940)

狩野友信に入門のち芳崖師事。東京美術学校入学後2年で退学。図画教育に従事。本草学を研究した学者画家。

《秋芳》と《群蝶図》

写真はうまく撮れてないけれど美しくてとても好きな絵。本草学を極めた学者だけあって植物画としても正確なのだそう。古典的でありリアリティもあり←大正時代の主流派と一緒。

 

◇高屋肖哲(1865-1945)

 芳崖に師事、東京美術学校一回生として卒業後、仏画師の道へ。

芳崖四天王の中で一番好きかも。菱田春草も好きだけど。

本展覧会の見どころか。真ん中の絵《千児観音図 下絵》

これは是非実物を。芸術新潮2018年5月号「永久保存版 これだけは見ておきたい 最強の日本絵画100」の中で泉屋博古館分館長が押してた記事読んでたので、実物!とびっくり(記事もう一度読んでみたら本展覧会で出ますと予告されてた(^^;)

本画は行方不明なんだそう。観てみたいなあ。

前期展示の《武帝達磨謁見図》の中に一人こちらを向いてるおじさんがいるのだけど、それが高屋肖哲本人では?というお話も。

今回パネル写真で紹介されていた高野山三宝院襖絵《高野物狂》全26面(そんなにあるの!)というのも是非観てみたい。

 

◇本田天城(1867-1946)

西洋画を学んだ後芳崖に入門。東京美術学校に入学し卒業後は同校で助教授を務めた。

左の山水が本多天城の絵、だけどちょっと遠くの写真なので是非間近で。

なんか不思議な山水で、西洋と東洋のミックスというか遠景が西洋風の山水風景画?

やっぱり第3章の人たちともリンクしてる。

 

以上が芳崖四天王。

高屋肖哲は仏画だけど皆教育の方に行ってしまったのも埋もれた一因とも。

 

今回初めて知った芳崖四天王は観山、大観、春草たち朦朧体四天王と同窓生。絵も見応えあって面白いし、何より興味深いのは変遷を経て結局は芳崖四天王も朦朧体四天王も到達地点が同じような場所だったということ。朦朧体四天王が日本画から線を無くし光を描こうともがいて型破りな朦朧体の時期を経て再び線を取り戻したときの絵と、芳崖の弟子たちが芳崖の教えを継ぎ型を守りながらそれぞれが到達した絵が同じような感じという…。

なお、型破りな人たちが型の方へ収束していったのは、戦争の時代もあり東洋を重視する時代背景もあったという解説も。

今まで芳崖、雅邦⇒観山、大観、春草という流れが主流と思われてきたのが、もう一つの水脈(芳崖四天王)というのがあって、この二つの流れがまた同じところに向かっていく。そういった近代日本画の流れが展示を通して俯瞰できる壮大な展覧会だった。

菱田春草《春色》《海辺朝陽》ともに前期展示

前期後期で作品の入れ替えがあり、芳崖の重文2点《非母観音》と《不動明王》は後期に登場するので、是非芳崖四天王の作品と見比べたいから後期も見逃せない。展示替えが多いので前期後期両方いくのがよいかも(^^;

 

狩野芳崖と四天王 近代日本画、もうひとつの水脈」展は、泉屋博古館分館にて前期が10月8日迄、後期が10月10日~10月28日迄。

 

芸術新潮 2018年 05 月号

芸術新潮 2018年 05 月号

 

 

 

 

ティアラ権力者のコード

三菱一号館美術館で開催中の「ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界-1780年パリに始まるエスプリ」展のブロガー内覧会に行ってきました。写真は特別に許可を得て撮影しました(通常でも一部撮影可能なコーナーもあります)。

 

まず第一室に入って驚き。絵画と宝石が並ぶ、この展示空間の豪華さと作品展示の手の込みよう。

壁紙まで凝ってる。

次の部屋は麦の穂のティアラから麦の壁紙だったし。

なんでもパリファッションショーのデザインチームが乗り込み作りこんだそうで、美術館で学術的裏打ちのある芸術鑑賞とエンターテーメントのような楽しさのある展示空間。ティアラの部屋で圧倒されるし、あくまでジュエリーを展示しているはずが最後のお部屋なんて凄いことになってたよ桜吹雪(;'∀')

結論:

これは普段美術館よくいく人も満足できるし、観光でちょこっと寄った人も楽しめる美術展。

あ、結論言ってブログ終わってしま。。。う訳にいかないので(せっかくブロガー内覧会行ったので)、もうちょこっと紹介。

最初の部屋(冒頭写真)の「歴史の中のショーメ」。ちょうど国立新美術館ルーブル美術館展」の講演会でナポレオンの肖像画の解説中、この三菱一号館美術館のショーメ展も併せて観ることを勧められた。というのもナポレオンの戴冠式の宝石セットはショーメが手掛けているから。そこで、ナポレオンの肖像画を観察し、ルーブル展で学んだ権力者のコード、服装持ち物ポーズなどをチェック❗(^-^;特にショーメだから金の月桂冠や正義の手の杖など宝石セットを観察ね。

この宝石セットを製作したショーメの創業者、マリ=エティエンヌ・ニトについてはは、フランス革命期、マリーアントワネットの日本の漆器コレクションが売却危機にあったとき、これは貴重なので保存すべきと鑑定したという逸話も紹介されていた(最後の部屋にマリーアントワネット漆器コレクションからの展示もあり)。まさに歴史の中のショーメ。

皇帝ナポレオン1世より贈呈された教皇ピウス7世のティアラ←あ、これもティアラなのか!

なんでも、ヴァチカンが普通は貸してくれない(;'∀')そうなので、それもこれも歴史の中のショーメのおかげでこうして日本で観ることが!

 

圧倒的なティアラ尽くし部屋は是非体験を!

豪華ティアラがこれでもかと並びくらくらする。

お気に入りはパンジーカーネーションの2点かな。

 

豪華ティアラばかり見てたら、このナポレオンの最初の妻ジョゼフィーヌの麦の穂のティアラのセンスの良さがじわじわくる(実は最初ピンとこなかった(^^;)。

メインビジュアルになってるの↓

ジョゼフィーヌは麦の穂、娘のオルタンスはオルタシア(あじさい)

この繊細なあじさいのジュエリーが実は一番好みだった(これくらい控えめなのが、と言いながら充分豪華。ゴージャスなものをたくさん見た後なので)。

あと、最後のお部屋で雷神の太鼓がタンバリンなのもチェックね❗(^-^;

 

ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界-1780年パリに始まるエスプリ」展は三菱一号館美術館で2018年9月17日まで。

暑いので東京駅や二重橋前駅から地下でつながっててホントありがたい。観光にもおすすめ。

 

動物たちの息吹

ホテルオークラ東京で8/23迄開催中の第24回 秘蔵の名品 アートコレクション展 動物たちの息吹のブロガーナイトに行ってきました。※写真は特別に許可を得て撮影

 

恒例のチャリティーイベント、普段なかなか観られない企業の社長室にかかっているような秘蔵の名品が出品されるので毎夏の楽しみ。

ここ数年は友人と一緒に観る約束をしており今回ブロガーナイト行くこと報告したら一緒に連れてけ~と言われ(無理す(;^_^A)見どころをしっかり聞いとくからと約束、東京藝術大学の熊澤弘先生の解説を必死になって聞いてきた。

※文中「」が解説で聞いたお話の引用部

 

展示は3章立て。登場する動物も分かれていた。

 

◆第1章 田園のなかの動物 西洋と日本

風景画と暮らしの中の動物たち。牛や馬など。 

ライスダールとゲインズバラの並び

「是非少し引いた場所から鑑賞してみてください」と。 

 

熊澤先生解説のヘルブラント・ファン・デン・エークハウト《ユノ、エピテル、そして牛に変身させられたイオ》

レンブラントの弟子の作品。ユノ(真ん中の女性)がレンブラントの《ユノ》の顔に似ている」←あらかじめ《ユノ》の画像検索して似てるかどうか会場で確かめるのも楽しい

解説によると、奥さんのユノ(ヘラ)が来たのでユピテル(ゼウス)が愛するイオを牛に変身させた場面←いわゆる修羅場(;'∀')。ユノの表情もだけど、この牛の憮然とした表情が。牛の普段の顔?でも物語を聞いた後だと擬人化して見えて。

 

中央 ジャン・フェルディナン・モンシャブロン《牧場》1888年

「明るい風景表現でモネの最初期と同じ。朝になってきた表現、横からきた光が木々に当たっているとことろ」を観てね

一番左 浅井忠《牛追い》1906年

大原女が牛連れててこれは好きだなと。制作年が亡くなる前の年。『浅井忠の京都遺産』展で忙しすぎて過労死か、という話を聞いたので気になった。

 

◆第2章 動物画の魅力 江戸から近代へ

みんな大好きかわいい犬猫はここ。最近の猫ブームで猫だらけ展頻繁にあり、当館の猫ちゃんは○○へ出張中の貼り紙で悲しい思いをすることも。でもまとまって観てみたいよね。←本展覧会で実現!特に虎が圧巻。

それは、ホテルオークラ東京が虎ノ門にあるので。。。

いやこれ冗談じゃなくそういう企画なんだそう(^^;

まずはバーンとこれを!

いやはや。会場のアスコットホールにずっとあってもいい感じ

この右側にもトラトラトラで宮内庁三の丸尚蔵館竹内栖鳳《虎》が!(写真不可なので載せられないけどこれは是非会場で体験を)

大橋翠石《虎図》いい表情。

「虎の画家といえば大橋翠石。岐阜の画家で地域の画家」なかなか関東では見られないとのこと。

そして虎と虎の間に挟まる「無敵の猫」来た!

アイコンにもなってる黒猫ちゃん。菱田春草《黒猫》

小冊子によると有名な《黒き猫》の前に描かれた作品で、春草は特に猫好きというわけではなく借りてきた猫が逃げて困ったエピソードも。絵でも警戒してる感がすごく出てる。今回の展示ではなんと春草の黒猫ちゃん2点《柿に猫》も並んで展示。私はこの警戒感いっぱいの猫ちゃんがいい!

そしてこれ。

橋本関雪《暖日》1929年

神ががかってる。絶対に人間の言葉喋る。

という個人的な感想はさておき制作年をチェック。

「1930年のローマ展(日本美術展)を開催するにあたり(オークラの)大倉喜七郎横山大観をはじめとする画家たちに依頼、そのため前年の1929年には面白い作品が多い。大観《夜桜》も昨年展示の清方《七夕》も1929年作」

 猫と言えばの藤田嗣治の猫も1点あり(現在大規模藤田嗣治展開催中につき1点みたい(^^;)。

そのほかの動物や、山口華陽の動物画の数々もこの章に。

 そして、実は一番楽しみにしてた応挙犬!芦雪犬!!

なんと、昨年『長沢芦雪展』にてこれは!と思った《洋風母子犬図》と《一笑図》が並んでる!!

左から円山応挙《十二支図の内 菊狗子》長沢芦雪《一笑図》《洋風母子図》もうこの並び好きすぎる❤

「《洋風母子犬図》は、すみだの宝(すみだ北斎美術館所蔵)。洋画風の厚塗りで白の部分はまるで油絵のきれつのようなものも。入念に描かれた表現」に注目。

これは昨年の展覧会で観てとても不思議で、暗い背景に厚塗りの入念描き洋風画が数点展示(大規模芦雪展では初展示とあった)図録には諸説あって謎みたいな話が載っていて、とにかくまたここで観ることできてうれしい。今後すみだの宝って呼ぼう。是非近くで観てね。

《一笑図》は竹+犬=笑。これ見ると、ほっと心和む。右のゴロンねしてる後ろ姿の黒白犬。よく芦雪の絵にはこの後ろ姿の黒白犬が出てきて、ちょっと離れたところで後ろ姿で絵の中を見てて、これは芦雪自身なんじゃないか(という文章もあった気が←うろ覚え)でもこの一笑図見て改めてそう思った。遊んでる犬と子供を見守ってるの。よく見るとすみだの宝の子犬もこの黒白ゴロンね犬なので、そうしたらほほ笑む母犬は芦雪の母に。

 芦雪ばかり観てたから大好き応挙犬が疎かになってしまった。もう一度来ます。

 

第3章 花鳥繚乱 美しき鳥たち

沈南蘋も!《鴛鴦図》これ帰国したあと描かれた作品で近代になってから日本に入ってきたのだそう。

渡辺省亭もあります←もう見どころが多すぎて収拾がつかなくなってしまった。

次の部屋にもずらっと花鳥画。上村松篁、上村淳之親子競演などみどころたくさん。

今回の解説では、作品とともに所蔵先のお話も併せてあって興味深かった。例えばあいおいニッセイ同和損保は椿のコレクション(本展にも3作展示)、きものの千總コレクション千總ギャラリー、大橋翠石の田原市博物館、広島の美術館の数々、ウッドワン美術館海の見える杜美術館ひろしま美術館、今後行ってみたい美術館が増えた。

なお今回の西日本豪雨災害で美術館は無事だったけれどスタッフの方の家が被災したなどいろいろ大変で、というお話も。そんな中、広島からやってきた作品も多いので是非足を運んでください。

 

最後に一枚。

小倉遊亀《晴日》

もうずっとこのワンちゃんみたいに木陰で涼んで休みたい。

 

チャリティーイベント 第24回 秘蔵の名品 アートコレクション展 動物たちの息吹は、ホテルオークラ東京にて2018年8月23日まで。

2019年2020年は開催されないそうなので(リニューアルオープンやらオリンピックやらでホテルが忙しくて)今年絶対行っといたほうがいいと思います(^^;

約束した友人ともう一度行ってグッズを買い求めます(どれもかわいい。時間がなくて選べなかった)。

 

 

モネ夜間鑑賞会

横浜美術館で開催中の「モネ それからの100年」展の夜間特別鑑賞会に行ってきました。写真は夜間特別鑑賞会のため特別に撮影許可がおりました。

 

みんな大好きモネ!モネ展というとわっと人が集まるそうで、そういう自分もモネの名前に釣られモネ展?!じゃ横浜行こ!でやってきた。

ただし展覧会内容詳しく把握してなくて、メインビジュアル(上写真)がモネの睡蓮なんだからモネ作品と供にモネにインスパイアされた現代アート作品が後半ちょっと並ぶ、のかな?あくまでメインはモネという感じで来た。現代アートは少しは見るけどそれほど興味がある方ではなく。。。実際自分と同じような感じでこの展覧会に来た人多いんじゃないかと(^^;

でも、そういうんじゃないです。

がっつり現代アートの展覧会。出品作品数の90数点のうちモネは25点。点数でいうと少ない気がするが、これが不思議、観終わった後

嫌っていうほどモネ満喫したわ!

となる。

もう展示マジック(キュレーションの力)と思う。

会場入り口の様子

この群馬県立近代美術館の《睡蓮》、昨年群馬で見たときガラス無展示に驚き、細部までまじまじと観て、近年見た中でこれが一番好きかも!と思った作品が冒頭にあって最初からテンション上がる。

そして右の文章を読み、確かに抽象の先駆けと思ってはいたけれど果たしてそこまで(モネはあらゆる現代美術の生みの親)?このあとガッテン!となるか。。。

展示は4章構成で各章にモネ作品、それに呼応する(対決する?)現代アート作品が並ぶ。一緒に並んで違和感なし。章立ての切り口に納得して観てるからかと思う(それは見る人それぞれの判断)。

 章立ては

Ⅰ新しい絵画へ 立ち上がる色彩と筆触

Ⅱ形なき物への眼差し 光、大気、水

Ⅲモネへのオマージュ(この章にはモネ作品なし)

Ⅳフレームを超えて 拡張するイメージと空間

表題の「モネそれからの100年」のそれとは、モネがオランジュリー美術館の《睡蓮》大作群ぐるっと睡蓮(と勝手に呼ぶ(^^;)を手掛けてからほぼ100年という意味だそう。※ブログ最後尾に年表

 

各章のモネ作品と共鳴する現代アート作品を鑑賞し、この章立てによって体系的に、自分がモネのどこが好きなのか、今までのなんとなく好き色が好き以上に、もう少し人に筋道立って説明できるくらいになった。それは、もともと思ってた色の喜びと(Ⅰより)、光大気水など遷ろう捉えどころのない何かを描いているところと(Ⅱより)、空や大気や様々なものが反射する揺らめく水面、空間に広がりを感じるところ(Ⅳより)。そもそも睡蓮という主題はそういう作品だった。切り取られた水面がフレームを超えて無限に広がっていく。

(あれ?でもモネは最終的にオランジュリーの大作に向かったということは、睡蓮の小さなフレームで無限の広がりを表すのでは満足できなかったんだろうか?最初みたときぐるっと睡蓮ならもうちょっと繋げて描けなかったのかな?キャンバスの制約なのかブツブツ切れてる感があると思ってしまった。もう何年も前であやふやなのでもう一度体感してみたい)

(そういうこと考えてたら、あの横浜美術館の正面入り口に掲げたモネの睡蓮を9分割にして掲げたパネルいいね!小さな睡蓮を拡大して9枚のパネルに。物理的な理由かもしれないけれどフレームを超えた広がりを感じる)

 

ちなみに、モネ作品のないⅢのオマージュが結構好きな作品が多かった 。Ⅰにあったルイ・カーヌ《彩られた空気》下写真左も。

というわけでモネの革新性を知り、魅力を更に深く感じられるモネ展だけど、しっかり現代アートにも魅せられて帰ってきた。

 「モネそれからの100年」展は横浜美術館で2018年9月24日まで。

 

※モネ年表

モネカッコいいよね。

うるしの彩り

泉屋博古館分館にて開催中の「うるしの彩 漆黒と金銀が織りなす美の世界」ブロガー内覧会に行ってきました(写真は特別に許可を得て撮影)。

古いものから近代まで。東京初上陸多数とのこと。

右《誰ヶ袖図屏風》と左実物!

第一室は能とうるし、香道茶道とうるしなど、副題の”漆黒と金銀が織りなす美の世界”ままの豪華な展示品が並び、華やかな香箱などに目を奪われながら、やはり一番はこれ↓

原羊遊斎の椿蒔絵棗(下の方の赤い地に金銀の椿が一枝のモダンなうるし)。デザインは酒井抱一。こんな感じの椿の絵ですけどどうですか~?という抱一の書状と一緒に展示(左上の軸)。さらに、右には尾形乾山の椿図もかかっていて、椿の花のふんわりした柔らかさや葉の感じはここからか?と思わせる。キャプションによると抱一の箱書があり原羊遊斎も目にしたかも、とあった。乾山→抱一→原羊遊斎のつながり。

とにかく豪華な展示!!

抱一の下絵も抜群。とはいえ、このささーっと描いた風(^^;の下絵の本質を見事に立体化してる原羊遊斎も凄い。ちょうど「大名茶人 松平不味」展で原羊遊斎(1772-1845)が多く出ていたのを見た直後で、一気に興味高まる。まとまって展覧会あるといいなあ。

 

第2室はアジアの様々なうるしと日本の近代のうるし。今まで興味持ってなかった分野なのでこちらがまたどれも面白くて。

特に中国のうるし、螺鈿と彫漆。螺鈿も見応えあるけど特に彫漆!高価な漆を何重にも塗り重ねて彫れるほど塗り重ねて彫る(+_+)想像を絶する贅沢さ。さすが中国皇帝が愛したうるし。

展示されている長方形と円いお盆。黄色の漆でともに龍が彫ってある。黄色は皇帝のシンボルカラーで龍は皇帝のシンボル。トップレベルの2点なんだそう。

皇帝の龍は爪が5本だけど四角いお盆の龍の爪は4本。市場に出るときに5本だとアレなので(-_-;)4本に削られたためと。

元の螺鈿と明の彫漆、ともに消耗品だったため本国中国にはあまり残っておらず、逆に使わず宝物として大切にしてきた日本にこういうトップレベルの品があるのだと。なるほど。見ることできて良かったー!

それと、最後にもう一点お気に入り。これはうるしでなくて、明の唐子図螺鈿長方盆の横に展示されていた江戸時代の唐児遊図屏風。とにかく遊ぶ様子がかわいすぎ!(写真の一点撮りはできないので、是非会場で詳細を見てください!)

 つながる日本美術というかメタモルフォーシスというか(^^;作品の楽しさと作品の並びの楽しさがある展示だった。

 「うるしの彩り」展は、泉屋博古館分館にて2018-7-16まで。7月の3連休までなのね。もう一回落ち着いて観に行きます。

 

 

ジョルジュ・ブラックのメタモルフォーシス

パナソニック汐留ミュージアムで現在開催中の「ジョルジュ・ブラック展 絵画から立体への変容ーメタモルフォーシス」の内覧会に行ってきました。※写真は特別に許可を得て撮影

最近キュビスムに興味があるので楽しみにしていたら。。。

今回はジョルジュ・ブラック(1882-1963)の最晩年3年間に取り組んだメタモルフォーシスシリーズに特化した展覧会だった。キュビスム絵画を目当てにしてると、あれ?となるけど(導入部に展示あり)、ブラックが目指した全ての造形物の美化、最晩年の美の到達点の数々は見応えあり。美しい造形物やジュエリーに目がない人は是非に。

メタモルフォーシスとは変身、変容を意味し、メタモルフォーシスシリーズは主要モチーフの絵画(平面)を元に作られた、陶磁器、ジェリー、彫刻、ステンドグラスなどの(立体)作品のシリーズ。

言葉で説明すると、ん?なのだけど見れば一目瞭然。同じモチーフがお皿や壺や指輪や彫刻など形を変えながら繰り返し使われているので。

↓の会場内の解説映像はとてもわかりやすい。,《青い鳥、ピカソへのオマージュ》が様々な作品に変わっていく

↓この横顔と正面の顔の女性(ペルセポネ)の作品よかった

陶磁器

タペストリ

ガラス

↑左の女性の横顔(キルケ)いい!

立体物で一番好きだったのがこのガラス彫刻。ブラックはドーム工房にガラス制作を依頼していたがブラックの死により作られず。その後2007年(ブラックの没後44年)に実現し17点の作品が制作され、そのうちの3点が来日。写真では伝えきれない美しさ。

このお魚さんたちもほんと美しいので会場で是非。

このジェマイユという手法(コクトーが命名ジェムとエマイユからジェマイユ!)で作られたステンドグラスも。ブラックの絵のステンドグラス。とてもいい!

好みでガラスやステンドグラスの写真ばかり撮ってしまった。しかし説明ではジュエリーが一番の見どころ!だそうなので(確かに美しいし造形的にも面白い)、ジュエリーについては会場で存分に見てください(^^;

それにしても。ブラックは最初キュビスムで平面に立体物を表現していたのが、最後は平面の絵画を立体物で表現する、になっていたのか。違うようで同じこと、かな?

そして没後何年経っても変身し続ける美というのもすごい。不思議な気分になる展覧会だった。

ジョルジョ・ブラック展 絵画から立体への変容ーメタモルフォーシスパナソニック 汐留ミュージアムにて2018年6月24日まで。なんと5月18日博物館の日は無料みたい‼

 

 

宝物みたいなターナー

イギリス風景画の巨匠ターナー風景の詩」の内覧会に行ってきました。東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館で現在開催中。※写真は特別に許可を得て撮影

まず、今回のターナー展はイギリス各地20か所の美術館と日本の美術館の作品で構成されていて、日本はともかく、ターナーを観るためにイギリス20か所なぞ巡れないので、もうそれだけでこの展覧会は行くべきと。

そして行ってみたら、今まで知らなかったターナーの新たな魅力も発見。個人的なターナー体験については↓に小さく(;^_^A読み飛ばしてください

ターナーが好きになったのはつい最近で2013年の都美館のターナー展。以前英国旅行で見たターナーについては、たくさんあるな、なんだかどれも黄色っぽくてもやっとしてるな、といったお粗末な感想で(-_-;)他に観たいものがたくさんあるので結構スルーしてしまった。それが日本の企画展で印象ががらりと変わる(興味範囲が広がったのと、知識が増えたのと、やっぱり日本で解説読んで、まとめてじっくり観たおかげ)。ターナーの多彩さと次々と新しい手法に挑戦していく様、絵自体が時代を先取りしてるなど驚きの連続だった。最後は時代超先取り抽象画のようになっていた!←先進的な絵の凄さって今の感覚で観るとわからないときある。今の感覚で観るとへんてこりんに見える司馬紅漢の絵の凄さとか

さて今回のターナー展では、ターナーの繊細な美しさ、風景の中の描かれた人々、そして宝物みたいな絵の数々を知った。

一つは「地誌的風景画」と紹介される初期の風景画。地誌的な絵画とは地形の特長が分かり描かれた場所が特定できるような記録的な絵画を指すそう。ターナーの絵は、目の前に広がる複雑な光景に人々の様子まで細かく描かれ、地誌的にも正しい、文字通り絵になる風景としてまとめあげてる。その力量。絵全体の美しさに見惚れた後、細部の人々の様子を見ていくと、またこれが楽しい。ターナーは生活する人々、働く人々に関心を持っていて絵に多く描きこまれているそうなので、これからターナーの絵を見るときは必ず風景の中の小さな人までじっくり観ようと思う。

ヴィニェット

そしてもう一つ、まさに宝物みたいな絵、「ヴィニェット」と呼ばれるもので、書籍の挿絵の形式の一つと解説にはあった(わかったようなわからないような?)。ターナーは白黒の版画になる前の下絵をカラーで描いていたということらしい。とても小さな作品で、近付いてみると豊かな色彩に細かい描写で一つの世界が描かれ、まさに宝石のような作品。もうこれは写真では絶対伝わらない美しさ繊細さ。何点もあるので(数えたら14点か)、これだけでも観に行った方がいいよ~と個人的に思う。

郡山市立美術館からは、このヴィニェットが実際版画になった作品が出品されており、いくつかの作品は並べて展示あり。それを見比べながら鑑賞できるのもよかった。版画は元絵の水彩画の美しさとはまた違った良さがあるのと、ターナーの版画はどれも完成度が高いのがわかる。ターナー自身が版画の芸術性を理解し重要性を意識して質にこだわっていたからと会場の解説にあった。

それと、この展覧会でたくさん出品されている郡山市立美術館(現在休館中で7月7日にこのターナー展の巡回で幕開け)はイギリス近代美術のコレクションに力を入れている美術館と。最近は東京以外の美術館のコレクション展を訪ね歩くの趣味(というか楽しみ)なので是非行かねば。

チラシに、《100%ターナー!第一級作品との贅沢な時間》とあったけど、まさにその通り。ほんと贅沢な時間だった。

ターナー風景の詩展は、東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館 (http://www.sjnk-museum.org/)にて7月1日まで。

このブログでは地誌的風景画とヴィニェットばかりとりあげたので、 最初と最後の写真に、みんな大好きターナー❤みたいな作品ももちろん揃ってるよ~を入れておいた。

 

追記

 ↓ この映画もよかった。ターナーの気難しい偏屈な感じも、ただただ絵に対して真摯だったこともわかって。因みに、今回の内覧会でターナーの人柄について、個性強く難しい人、成功した人を妬み思いあがった人(;^_^Aコックニーアクセントを使い続けエスタブリッシュじゃない部分を持ち続けた人。そして後世に多大な影響を与えた偉大な人物。という結び。映画でその一端が。

ターナー、光に愛を求めて [DVD]

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