うさこ観覧記

またブログ始めました。展覧会観て自分のために何か残さないとすぐ記憶が流れていくから。

いい人っぽい癒しのドービニー

東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(いつも損ジャと呼んでいるけど(^^;名称変更予定というので残り少ない日数の正式名称を使ってみた)にて開催中のシャルル=フランソワ・ドービニー展のプレス内覧会に行ってきました。

※写真は特別に許可を得て撮影

さてドービニー。

最近まで知らなかった(^^;

シャルル=フランソワ・ドービニー(1817~1878)

19世紀フランスを代表する風景画家。バルビゾン派で紹介されるけれど、それほどバルビゾンに長く関わっていなかったのでコローやミレー程大きく取り上げられず日本では初の本格的な個展。

(一階の美術館入り口、エレベーターで上がる前のロビーでドービニーについてのすごくわかりやすくて、ドービニーを知らなくても親しみが持てる動画が上映されているのでそれを見てから行くとよいと思います。美術展のHPでも動画公開中。)

絵を見てもそう思うけれど、コローとお友達だったり、モネやピサロを画商に紹介してあげたりとドービニーいい人っぽい。絵から滲み出る人柄もよい感じ。

実際、こうして写真上げても、なんだか似たような構図の似たような川の絵で全く良さが伝わらない(^^;会場でも時間がなくてパーッと流してみてしまうと印象に残らないかも。でもね。ドービニーは一点一点じーっと見てるとはまる。ほんといい! 

実際似た様な構図の絵が多いのはそれだけ需要があって人気だったからと。うんうんうなずく。

特にお気に入りがルーアン美術館の《オワーズ川、朝の効果》←残念、写真撮影不可なので展覧会場にて是非!

朝焼けの空が川面に映り、川辺で牛が穏やかな顔でたたずみ、近くに牛飼い?そして小さく小さく川辺に青い鳥。もうずっと見ていたい絵。

他の絵も目を凝らすと小さな鳥や動物が細かく描かれていて、それを見つけては目が喜び心ほぐれる。癒しのドービニー。

この左手前の《兎のいる荒れ地》。題名みないですっと通り過ぎたら荒野の絵。題名見て、え?うさぎ?あ!いるよ!小さく荒れ地でたたずんでるよ~。もう泣き笑いみたいな気分に。

ドービニーいいよなあ。小さく描かれた生き物たちの絵から伝わる温かさ。

この版画集「船の旅」も好き。ドービニーはボタン号という名前のアトリエ船を仕立て川辺の絵を描いた。そのボタン号での旅の様子。一枚一枚見ているだけで楽しくなる。

右端の絵は二代目のアトリエ船《ボッタン号》

ドービニーの風景画は刻々と変化する自然を素早いタッチで筆跡を残して描いていたため当初、印象を描いた荒描きの未完成の絵と批判されたそう。なんか聞いたような話だなー。そう印象派の受けた批判と同じ。ドービニーは印象派のさきがけのような画家。戸外で自然の風景を描く、アトリエ船で川辺の風景を描く。実際モネはドービニーの影響でアトリエ船で水辺の絵を描いた。

そしてゴッホはドービニーを尊敬していてひろしま美術館の《ドービニーの庭》を描いた。

ドービニー日本での知名度低いかもだけれど、絵を目にしてこの逸話を聞いたらもっと人気でるはず。というか私自身はその過程を辿ってすっかりドービニーファンになった。

シャルル=フランソワ・ドービニー展損保ジャパン日本興亜美術館にて2019年6月30日まで。

ラファエル前派展というかラスキン展

三菱一号館美術館にて開催中の「ラファエル前派の軌跡展」ブロガー内覧会に行ってきました。

※写真は特別に許可を得て撮影

ラファエル前派展?また?と思っていたら、いきなりターナー来た!《カレの砂浜ー引潮時の餌採り》

何故冒頭がターナーかというと、この展覧会の長い題名「ラスキン生誕200年記念 ラファエル前派の軌跡展」が種明かし。実はラスキン展だった!

ラスキンの作品とラスキンを巡る人々の展覧会なのでターナーからいつものラファエル前派の作家たちとウィリアムモリスまで。内覧会での解説の中で、ラスキン展としてしまうと人が呼べないというお話もあって(^^;でもまあ事実。私自身もラスキンと言われても、えーっと誰だっけ、(解説読んで)あー作家じゃないけど名前挙がる人、美術批評家でラファエル前派の精神的支柱みたいな人、と思い出し。

今回の展示では、そのジョン・ラスキン(1819-1900)が美術批評家だけでなく社会思想家でもあり、さらに彼自身も絵を描いたことを知った。

ラスキンの素描

自然や建築を描く。

 

ターナー(1775-1851)との繋がりは、評価を確立していたターナーがだんだん実験的抽象的絵画を描くようになり批判が多くなったとき、もともとターナーのファンだった若いラスキン(44歳年下)がターナーは自然を描いていると著作で擁護、ターナー再評価に貢献した(自身の名声も得た)のだそう。

展覧会ではラスキン旧蔵のターナー作品《ナポリ湾》も展示。

 

ラファエル前派の絵は美しい女性がまず目に入ってきて、その周りの自然の美しさ、植物が写実的で(本物に忠実で)美しいのも特徴的。それはラスキンの「自然をよく観察して描きなさい」を守って描いているから。

ちなみにラファエル前派の展示室↑美しい花に彩られた女性たちの華やかなお部屋は今回撮影可エリアです!金の派手な額縁に全く負けない絵、というか金縁が似合う。

ラスキンを含むどろどろの人間関係については割愛。こんがらがっているので毎展覧会で確認してあーそうだったと思い出すけど毎回(^^;←こんな顔になるし覚えきれないし)

 

以前はミレイの絵が一番の関心だった。でも最近はエドワード・バーン=ジョーンズ(1833-1898)の絵が楽しみ。

この左の絵↑の《赦しの樹》の癖の強さというか苦い味わい。

 

ラスキンはバーン=ジョーンズを見出し、この画家ならばと見込んで指導した。

そのバーン=ジョーンズとオックスフォード大学在学中に知り合った友人で、その後一緒に作品制作もするのがウィリアム・モリス(1834-1896)。

モリスとラスキンの繋がりは社会思想的なこと。ラスキン産業革命により機械化が進み粗雑な製品が溢れたこと、機械のために人間が働かせられていることを批判、手仕事の美しさ、労働の喜びを提唱した。モリス主導のアーツアンドクラフツ運動(伝統的な手仕事を尊重し生活と芸術を一致させることを目指した)はそのラスキンの考えを信奉する人々により始まったもので、モリスはラスキンの考えを継承したことに。

 

最後展覧会の締めくくりとしてとても良いなと思った大きなタペストリー。

モリスとバーン=ジョーンズの《ポーモーナ(果物の女神)》

モリスのデザインした植物の中にバーン=ジョーンズの女神が。

 

ラスキン生誕200年記念 ラファエル前派の軌跡展」は三菱一号館美術館にて2019年6月9日まで。

 

大好きモリスの《いちご泥棒》

ウィリアム・ド・モーガンのタイルもいい!

 

 

 

 

 

 

桜と一緒に華ひらく皇室文化

泉屋博古館分館にて開催中の「華ひらく皇室文化」展ブロガー内覧会に行ってきました。

 美術館周りはもうすぐ満開の桜で華やいでおりました(2019年3月27日撮影)。 

美術館前の太閤千代しだれ(醍醐の桜のクローン)は盛り過ぎ💦←来年のためにメモ(ソメイヨシノより早めなのね)

2018年は明治150年ということで今まであまり馴染みのなかった画家や工芸家を知る機会が多く(例えば野口小蘋など)帝室技芸員についての知識も増えたところで最期を飾る「華ひらく皇室文化」展。明治150年関連の展覧会の総決算みたいなものかと。

帝室技芸員とは、帝室(皇室)による美術工芸作家の保護と制作の奨励を目的として設けられた顕彰制度で、1890年~1944年までの55年間に陶磁、七宝、漆工、染織、金工、刀剣、絵画、彫刻、建築、写真、篆刻、図案といった分野で計79名が任命された。

 皇室のための作品制作だけでなく、技術の保護と発展のためという目的があった。

 

今回の展覧会はこの帝室技芸員の作品「明治宮廷を彩る技と美」と、宮中晩さん会で使われる洋食器やドレスやボンボニエールなどの華やかな宮廷文化を紹介する「鹿鳴館の時代と明治宮殿」の2部構成となっている。

↓写真は撮影可の現代のボンボニエール(ミキモト製作)

 

ずらっと並んだボンボニエール(撮影不可だったので会場で楽しみにしてください。素敵でかわいい)が見どころ。

以下個人的に見どころ!と思ったものをいくつか(展示順)。

☆乾山伝七の洋食器

それまで和食器に平らなお皿というのがなかったため、形に歪みがあるけれど絵付けはとても繊細で美しい、日本製の最初期の洋食器。

☆矢澤弦月《昭憲皇太后像》

☆松岡映丘《明治天皇像》

対になっているのに背景の金地の色が違うと思ったら、皇太后は青い金、天皇は赤い金が使われていてそれぞれ月と太陽を表すという解説。

☆天鵞絨(びろーど)友禅嵐図壁掛 12代西村左衛門

昨年こちらの美術館で開催された木島櫻谷展にて展示されていた櫻谷の若い時の作品《猛鷲図》が原画。まさか一年経ってから観られるとは。絵の感じと迫力だけは覚えているけど(うろ覚え)びろーど友禅という素材のせいか羽のしっとりした感じがとても美しく。

板谷破山《鮭》

重文の《葆光彩磁珍果文花瓶》ではなく←いやこれ本当に美しいのだけれど何回か見たことあるのでこっちじゃなくて《鮭》。というのも、板谷波山東京美術学校木彫科を卒業というのは知っていても木彫作品見たことなかったのでレア度で。

☆濤川惣助の《月花図七宝皿》《月桜図七宝額》《墨画月夜深林図七宝額》

どれもうっとりと見惚れてしまう。特に最後の月夜は300種の釉薬で黒の濃淡を表現とあってもう言葉なし。これは。。。としかいいようなく。水墨画のようでまた別の次元にいってしまっているようで。

野口小蘋もあった。前期《春山明麗図》と後期《蘭亭図》と入れ替えなので後期も行かなくては!

明治150年記念 華ひらく皇室文化 明治宮廷を彩る技と美」展は泉屋博古館分館にて前期は4月14日まで、後期は4月17日から5月10日まで。

同時期に学習院大学史料館でも「華ひらく皇室文化」展開催中(こちらは5月18日まで)なので併せて観に行かないと(ちなみにこちらは入場無料!)。

 

泉屋博古館分館近くのアークヒルズの桜。ほんと桜散策にいい季節。

 

 

 

 

 

かわいい青銅器

泉屋博古館分館で開催中の「神々のやどる器 中国青銅器の文様」展ブロガー内覧会に行ってきました。※写真は特別に許可を得て撮影

 

中国青銅器の世界というと器の種類がいろいろあってさらに器そのものの漢字が難しくて(^^;敷居が高く長らくスルーだった。それが数年前に東博東洋館のイベントで青銅器の見方というのに参加してから興味持つようになり。その時は文様から顔を探そう(顔面文様を見つける)という解説を聞きながらで苦手意識も飛んで楽しかった(文様から入るのいい)。

そして今回の展示は解説聞きながらじゃなくても一目で楽しい。

ぱっと見ではわからない隠れた文様が一目でわかる写真が一緒に展示されてるから。これいいね!

 

まず文様を探してから答え合わせするのもいい。こども楽しいよ絶対。

 

そして文様探しの白眉はメインビジュアルにもなってるこれ。

人が食われる直前か?!とよく見たらほほえましい顔してる。人がしがみついててまるでトトロ。なので《虎卣こゆう》のことをトトロと呼ぶ。

名前から判明。これは虎なんだそう。巨大猫っぽくもあるけど、虎型神様(トトロ)に守られる人間。

このトトロは頭の上に鹿も載せてて合体したブレーメンの音楽隊のようでもある。かわいい。全身に龍や蛇やバクやららあるし、後ろ姿には顔面(饕餮とうてつ)まで。

会場には「商周青銅器の文様」という初心者にもわかりやすい青銅器の文様についての解説があって、それによると

1.饕餮文(とうてつもん) 器の表面に大きく顔面文様。探すと目、鼻、口、耳、角などわかる。冒頭述べた東博のイベントで探したのがこれ

2.龍形文様 文字通り龍の文様(皇帝といえば龍だけど原点は青銅器だったんだ)

3.鳥形文様 小鳥から鳳凰の原型となった大鳥まで(鳳凰も青銅器からなんだ)

4.その他の動物文様

文様だけでなく、トトロが虎だったように器そのものが動物の形をしている青銅器がとにかくかわいい。 

一番かわいいのはこのミミズク↓《戈卣かゆう》

愛らしい。根津美術館の看板娘的な《双羊尊》←羊の顔が2つついてる青銅器、と同じように背中合わせにミミズクの顔が2個

またその表情がとぼけてていいし、たたずまいもかわいい。どうもそのかわいらしさは足が内股のせいらしい。

そのかわいい子が2個も。ミミズク4羽ってことか。泉屋博古館すごい。

たたずまいといえば、これ↓かっこいい。

 

ここで年表見ながら面白いなあと思ったお話をおさらい。

中国の青銅器は3500年以上前に誕生。商周の時代の青銅器はお祭や儀式のためのもので文様も神様である動物がモチーフ。それが漢時代のごろから青銅の鏡がたくさん作られるようになると吉祥文様に変わる。秦時代に官僚制がしかれ、それまで政治と祭りが密接な支配者のための青銅器が官僚クラスの個人のものになり、文様も個人の幸せ追及のためのモチーフになった。不老長寿だったり昇進だったり。

展覧会場第2室は、青銅器の鏡を展示(鏡は個人のラッキーアイテムだったんだね)。

↑大丈夫。鏡の文様を探せ!も詳細な解説パネル付き。イノシシかわいい。

 

形も文様も奥深いから敷居が高く解説がないとなかなかなあと思ってた青銅器の世界、ただただ文様の細かさ美しさを愛でるだけでもいいし、なんだ鏡は出世を願うラッキーアイテムだったりしたのか、と思ったり、単純に形がかわいい!動物文様探すの面白い!といったいろいろな楽しみ方を教えてくれる展覧会だった。

こどもが行くと楽しいと思う。歴史の勉強にもなるし(中国の歴史覚えるの面倒でしょ。青銅器に興味持ちながら楽しみながら覚えるといいと思う(^^;)。

神々のやどる器 中国青銅器の文様」展は泉屋博古館分館にて12/24まで。美術館前の泉橋のクリスマスイルミネーションやってるのでちょうど見頃。

あ、それと美術館入り口、なんでこんな所に顔出しパネル?と思ったら、展示を見てわかった(^^;あなたも虎型神様にいだかれ守ってもらおう!

 

ボナール観たらフィリップスへ行こう

三菱一号館美術館にて開催中の「全員巨匠!フィリップス・コレクション展」ブロガー内覧会に行ってきました。

写真は特別に許可を得て撮影(更に、通常は会場風景として作品撮影を許されるところ、今回は特別に作品そのものの撮影も可でした!)

マネ《スペイン舞踏》

出品されているのが全員巨匠作品それも選りすぐりのものばかりなので、見どころはざっくりいうと全部!!

そうなるともう個人的思い入れの見どころしか存在せず。

なので、私自身の見どころはボナール!

国立新美術館で開催中(12月17日まで)のピエール・ボナール展は初日の講演会から聴きに行き普段は行かないシンポジウムや対談といったイベントまで全出席。また今週もう一度観に行く予定、という入れ込み様。ボナール大好き。

その初日の講演会、オルセー美術館のイザベル・カーンさんのお話の中でもボナールには多くの買い手がいて(恵まれた制作環境)イワン・モロゾフとともにダンカン・フィリップスの名前が挙がっていた。そしてボナールのコレクションといえば第1がオルセー美術館であり、第2がフィリップス・コレクションとのこと。←この話は今回のブロガー内覧会でも紹介された。

これはボナール展観たら三菱一号館美術館のフィリップス・コレクション展観に行かないと!

 

名立たる巨匠作品75点中ボナールは4点。それもいいボナール(;'∀')ばかり。というか、コレクション全貌を見たわけではないけれど、フィリップス・コレクション半端ない。少なくとも今回東京に来ている作品、ボナールに限らずどれも素通りできない作品ばかりずらりと揃っている。

 

ボナール《犬を抱く女》

マルトと犬と食卓と。一目見て好き過ぎるでしょ、と思ったら。。。

フィリップスが1925年にこの絵を目にしてボナールの支援が始まったと解説あり(そうなるよねー)。その後1930年アメリカの美術館で初めてのボナールの個展も開催。

ちなみに今回の展覧会の展示の順序は年代順でも作家毎でもカテゴリー毎でもなくフィリップスが入手した順番とのこと。大きな黒丸の数字が今回の75点の入手順。おかげで8番目のボナールと9番目のモリゾの《二人の少女》が並ぶという素敵な展開に。

 

ボナールの代表作《棕櫚の木》

代表作だけあって前述のボナール展図録にも白黒で記載在り。色や背景の小さい人についての解説もあるのだけどなんぜ白黒の図版でわからないなあと思っていたら、まさか東京で直後に実物を確認できるとは!これは見逃せない。

 

ボナールの窓の外と部屋の中の絵も好きなので、これも嬉しかった。

《開かれた窓》

ボナールの絵はずーっと見てると様々な発見があり、あ!右下に猫!それもマルトとハイタッチしてる!かわいすぎる。あれ?いつも無表情のマルト笑ってる?マルトじゃないのかな。

などと次々と発見やら思いやらが交錯して全く見飽きないボナールの絵。ずっと見てられる絵。

 

ボナールの友人、ナビ派のヴュイヤールの絵も(いつかヴュイヤール展も開催希望)。

ヴュイヤール《新聞》

 

まだまだある好きな絵をいくつか。

みんな大好きルソー《ノートル・ダム》

シスレー《ルーブシエンヌの雪》

デュフィ《画家のアトリエ》

モランディも来てます《静物

ブラック《驟雨》

ジョルジュ・ブラックの絵は7点もあってどれもよくて自転車の絵だからとりあえずこれを挙げた。今回自分の中でブラック急上昇。

うまく写真が撮れなかった絵で挙げられない好きな絵や撮影不可のココシュカも挙げてない。とにかく好きな絵だらけの展覧会だった。

 

全員巨匠!フィリップス・コレクション展」は三菱一号館美術館にて2019年2月11日まで。

  

 

愛のすべて。

「愛のすべて。」と潤んだ瞳で問いかけてくるポスターが印象的。

 ルオー没後50年、パナソニック汐留ミュージアム開館15周年という特別なルオー展「ジョルジュ・ルオー 聖なる芸術とモデルニテ」開催中につきプレス内覧会に行ってきた(プレスではなくブロガーとして参加)。※写真は特別に許可を得て撮影

ジョルジュ・ルオー財団理事長(ルオーのお孫さん)ジャン=イヴ・ルオー氏

毎年ここで開催されるルオー関連の展覧会。ここのところ欠かさず観に行っている中今回は本当に特別と思う。特別な作品が展示されているというのもあるし(写真のルオー氏の背景の絵《サラ》は普段氏のオフィスにかけられ、生前ルオーがアトリエに何十年もかけていて絵の具を重ね彫刻のように厚くなっている)、キリスト教とルオーというど真ん中展示ということもある。元々ルオーの絵はキリスト教に根付いているけれどそれを直球で持ってくると急にとっつきにくい感が。宗教画題、受難とか受肉とか言われても…。

しかし。

「愛のすべて。」というあのポスターの台詞通り、宗教を超え全ての人の心に訴えかける愛についての作品群なので、文化や民族や宗教を問わず感動できる絵の数々が並んでいた。

とはいえ、プレス内覧会で後藤新治先生の解説を聞き、副題の意味や章立ての意味を理解してみると又深く味わえる展示と思ったので、簡単に以下に説明を(そんなのいいわ、感性で観るわ、という場合は下の見どころ3点だけで後はすっ飛ばして読んでください(^^;)。

◇見どころ

  1. ヴァチカンから来てる絵!(別の展覧会でヴァチカンが貸し出すなんて!という話を聞いてえらいことなんだな(^^;と)
  2. ガラスがかかってない絵がある!あの絵の具が盛り上がった様子や色の透明感がガラス越しじゃなく見られるまたとない機会
  3. 旅するのに耐えられない絵が来てる!厚くて脆いので今度いつ日本に来れるかわからない

以上大まかに3点。ルオーの絵は解説なくても心に迫ってくる。

 

◇副題「聖なる芸術とモデルニテ」について

モデルニテとは現代性、近代性。一方聖なる芸術、中世以来のキリスト教芸術は古典。芸術とは古典的で永続的な美の規範に対する反逆である(古典と現代性は半々であるべき)byボードレール

ならば20世紀を生きた画家であるルオーの古典に対する反逆、モデルニテとは?革新性は?というのが展覧会のテーマ、なのかな(急に弱気(^^;)。

 

◇4つの章立てと読み解くための4つのキーワード

第1章 ミセレーレ:蘇ったイコン

第1のキーワードはイコン 版画の複製性

元来イコン(礼拝用画像)は家庭でオリジナルをコピーして用いていた。現代の版画の複製性に通じる。

ルオーの慈悲と戦争がテーマの版画集《ミセレーレ》は、まるで20世紀に復活したイコンのような作品(蘇ったイコン)。各タイトルも全てルオーが考えた。

《ミセレーレ12》のタイトル「生きるとはつらい業…」

《ミセレーレ13》のタイトル「でも愛することができたなら、なんと楽しいことだろう」

続けて読むと、版画全体の主題が現れている。「生きる苦悩」と「愛による救済」

 

第2章 聖顔と聖なる人物:物言わぬサバルタン

第2のキーワードはサバルタン 被抑圧者の無言の抵抗

 サバルタンとは発言の場を持たない民族、虐げられ抑圧された人(被抑圧者)のこと。

第2章で集められた《聖顔》は栄光のキリストの顔ではなく物言うすべのないサバルタンの苦しみを代弁する顔。

 

第3章 パッション:受肉するマチエール

第3のキーワードはマチエール

 ルオーの独特なマチエール(絵の具厚塗りして彫刻のようになった絵肌)は、絵の具を塗り、塗った絵の具を削って薄くしてまた塗る、削っては塗るを繰り返し厚くなる。

まるで受肉。(受肉とは神が肉体を持つこと、だそう)

 

第4章 聖書の風景:未完のユートピア

第4のキーワードはユートピア 管理社会への警告

ヨーロッパで描かれてきたユートピアとは大海の孤島であったり山のてっぺんの秘境であったり現実世界と隔絶された姿で描かれてきた。一方ルオーのユートピアとは。

《秋 または ナザレット》ヴァチカン美術館蔵 1948年

太陽が輝き、地平線に建物、中央の末広がりの開かれた道には自由に人々が集う。

隔絶していない、誰にでも常に開かれた世界。

民族差別、難民排斥など内に閉じようとしている現代社会への警鐘にも見える。

 

以上、慣れない単語が多い中、ルオーの誰の心にも響く絵に助けられ、ほんの少し理解することができたことをまとめてみた。

 

ジョルジュ・ルオー 聖なる芸術とモデルニテ」はパナソニック汐留ミュージアムにて2018年12月9日まで。

 

帰り道の夕景

 

 

 

 

 

 

スウェーデンの理想の暮らしカールラーション展

カール・ラーション スウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催中)のブロガー内覧会に行ってきました。

※写真は特別に許可を得て撮影

日本では1994年にカール・ラーション展があり今回が2度目。1985年には日本でも著作「わたしの家」が出版されており 

カール・ラーション―わたしの家線描の水彩画で子供や家の様子が描かれた絵は一度目にするとあら素敵と目が留まる、ので名前は知らなくても絵柄は知られているのでは。

私自身カール・ラーションが気になったのはIKEA経由。以前IKEAカール・ラーショングリーティングカードセットがあって購入、素敵だなあと思い昔訪れたスウェーデン国立美術館の図録をみてみたら魅力的に描かれた妻カーリンと子供を描いた作品が紹介されていた。そこにはスウェーデンで一番愛されている画家という解説が(美術館訪れた時は巨匠名画ばかりに気を取られ地元作家は飛ばし気味。本当はそういうのこそ見るべきと今は思うけれど。美術館の壁画もカール・ラーションが描く)。

カール・ラーション 1853-1919

日本で言うと幕末に生まれ明治から大正時代に活躍した画家。面白いのはスウェーデンも遅れて近代化の道を歩んでいた時代ということ。日本と同じだ。ただ、カール自身は革新的な人で反アカデミーで反体制派だった。そのことで1880年代パリに移り住むことに。このころパリはジャポニスム全盛期でカールもその洗礼を受けた。

メインビジュアルの《アザレアの花》(上写真右)は花を全面に大きく持ってくる大胆な構図と線描で描くという点で浮世絵の影響が顕著な作品。ただ線描に関しては元々挿絵画家ということもあったからとも(挿絵作品も展示あり)。

しかしなんといってもカール・ラーションと言えば

1.近代化していくストックホルムに大作壁画を描いた(スウェーデン国立美術館フレスコ画

2.家族との理想の家を描いた水彩画画集を出版し世界中で人気になった

本展覧会では2つ目の仕事について、同じく芸術家である妻カーリンの仕事も展示(日本初紹介)して「理想の家」がより立体的にわかるようになっていた。

 ◇理想の暮らし、理想の家《リッラ・ヒュットネース》

カールとカーリン夫妻は田舎の家《リッラ・ヒュットネース》を改装し、アンティーク家具に手を入れたりカーリンのデザインした刺繍などのインテリアで理想の家を作り上げ、そこに暮らす家族、普段の子供の姿、隣人の様子を画集にして出版した。当時大人と子供は同じ食卓を囲んだりしなかったし、絵に描かれた子供の姿は緊張した面持ちで普段の姿ではなかった。そういう時代にカール・ラーションが描いた子供や家族の様子、家の中の様子はインテリアを含めてスウェーデンの理想の暮らしであり、世界中で出版され人気となった。

アーツ&クラフツ運動ぽいと思った

カーリンの刺繍作品の中でこの花と蛙が一番好き

 

展示の最後にIKEAの家具で設えた今に生きるラーション・スタイルのコーナーがあり、これを見るとカールとカーリンが作り上げた理想の暮らしは今の私たちの生活にも影響を与えているのだなあというのがよくわかる。

昔カールがジャポニスムの影響を受け、今の私たちが北欧デザインを好み暮らしに取り入れる。全く繋がりがないように思ってたカール・ラーションが今の私たちの生活に深く入り込んでいるという不思議な繋がり。

 カール・ラーション展東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館にて2018年12月24日まで開催中。

カール・ラーション スウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家

カール・ラーション スウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家

 

 最後にちょこっと感想:幕末から明治大正の日本の画家で反体制派の人ってどんな画家がいるのだろう。明治大正の日本の画家で思い浮かんだ横山大観などはばりばりの体制派。それとカール・ラーションは反体制派なのに国立美術館フレスコ画を描くまで上り詰めたということが凄い(本人が転向したのならまた話は変わってくるけれど)。国を愛するというのは国土やそこに暮らす人々の生活を愛することであり、体制を支持するしないは別なので当然と言えば当然だが、日本の場合、国=体制となりがちで、反体制派の人が国立施設の壁画を任されたりしないだろうなあと思ったので気になった。

 

カール・ラーション スウェーデンの暮らしと愛の情景 (ToBi selection)

カール・ラーション スウェーデンの暮らしと愛の情景 (ToBi selection)